グローバルビジネスで戦える人材になるためのヒント"The Essence of BBT"
進研ゼミ付録の顕微鏡の余剰在庫を使い、インドネシアの学校で理科の実験

ベネッセグループはビジョンとして「グローバルに社会的価値を生み出し続けることで、社会と共に発展し続ける、世界で一番シンパが多い、突き抜けた営利企業になる」ことを掲げている。そのために社会的価値と事業価値(事業利益)がお互いに高め合うというベネッセグループの姿をイメージしている。CSRと言えば発展途上国への寄付や援助が主流だったが、それだけでは実現し得ない持続可能かつ発展的な、両価値のスパイラル効果の実現を目指している。

そのようなビジョンを掲げる背景・理由とどのような意義・目的をもって取り組んでいるかをベネッセホールディングス グローバルソーシャルイノベーション部長の三木貴穂氏に聞く。聞き手は米国NPO法人コペルニク共同代表の中村俊裕氏。

寄付や援助だけでは、社会問題を解決することが難しい
日本では少子高齢化が急速に進み、財政悪化から経済成長率も下振れ傾向にある。企業もこれまでと同じように従来の延長線上で事業を続けていくだけでは生き残るのが厳しい。こうした市場背景を踏まえ、ベネッセグループではCSV(Creating Shared Value=共有価値の創出)の概念が必要であると考えた。CSVとは社会課題の解決と企業の利益・競争力強化を両立する考え方である。民間営利企業として本当に果たす役割は何か、出来ることは何かということをベネッセグループは模索している。

途上国ビジネスの需要は急増しているが供給は限定されている。複雑な規制やインフラの欠如、日本と海外の間に横たわる大きな文化ギャップや制度ギャップ、現地での事業パートナーを探すのが困難なことなどから、手が出しにくいビジネスの範疇だった。従来はこうした障害が大きく、実行に移すことが難しかったが、ノウハウを持つNPOやNGOなどの援助機関が新しく登場し、そことコラボレーションすることで新たな可能性が生まれるようになってきている。

社会問題の解決策から、現地に普及させるためのノウハウを獲得
例えば、「進研ゼミ小学講座」の付録は欠品などに備えて一定量の余剰在庫を持たなければならない。在庫期間が過ぎると廃棄していた。例えば、インドネシアの学校には顕微鏡が普及していない。そこで日本の在庫を廃棄する代わりに、顕微鏡をインドネシアに持ち込み、現地の子どもたちが理科の実験に役立てることができるようにした。この時、顕微鏡というハードウエアだけでなく、理科の実験授業というソフトウエアとセットで提供して現地の生徒の心の琴線に触れさせることによってはじめて効果があがる。理科の実験授業の設計までセットで企画できる援助機関はほとんど存在せず、NPO法人のコペルニクと事業パートナーを組んだ。社会貢献する中で、普及させるためのノウハウを獲得できるのが、ベネッセにとっての大きな収穫である。獲得したノウハウを使って、ビジネスにつなげる計画である。これが、冒頭で触れた社会価値と事業価値(事業利益)のスパイラル効果のイメージの一例である。

顕微鏡の普及は世界からの寄付でまかなう。進研ゼミの受講生は成績が良いと「努力賞ポイント」が与えられるので、ベネッセではこのポイントを寄付に使えるようにし、顕微鏡を寄付することに「努力賞ポイント」を使うことでインドネシアに対する受講生の共感や関心を高めることができた。また、ベネッセはCSR(企業の社会的責任)にとどまらず、事業としての展開を研究することで企業の利益につなげようとしている。

インドネシアの社会企業団体に若手社員を6か月間長期派遣することで、グローバルリーダーの育成、モチベーションアップにもつながっている。
同社では、インパクト・インベスティング(社会的な課題の解決に寄与することを目的とする投資)枠である「ベネッセソーシャルインベストメントファシリティ」を1500万米ドル規模で2013年4月に設立した。これは、日本の民間企業としては最初の例になるのだという。将来的にはベネッセの新規事業創出や事業領域の拡大に結びつけていくことも目指している。

企業とNPOの距離感は縮まっている。互いの弱点を補い、利点を有効に活用して途上国への進出を推し進めていくことが双方ともの成長につながるのである。

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