グローバルビジネスで戦える人材になるためのヒント"The Essence of BBT"
国にも勝ちパターンがあり、本気で取り組まなければどんどん追い抜かれる

世界第3位の経済大国である日本だが、このままでは衰退していくことが予想されている。日本が将来的に生き残っていくためにはどのような方法があるのか。人口の多い国、経済力のある国、資源の多い国など「持てる国」には、「持てる国」なりの勝ち方があり、それらを「持たざる」国にもそれなりの勝ちパターンが存在する。「持てる国」「持たざる国」そのどちらでもない「中途半端に持つ国」に分類して、それぞれの勝ちパターンを探り、日本の将来の生きる道を早稲田大学商学学術院教授の内田和成氏に聞いた。
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「持てる国」「持たざる国」「中途半端に持つ国」とは?
「持てる国」は米国、中国、ロシア、ブラジルである。

米国は自国の市場規模が巨大なうえに成長しており、フルラインの産業構造を持っている。世界的にも高付加価値産業である航空宇宙、IT、金融、サービス業に強い。世界第一の経済力を背景に政治・ビジネス習慣・会計基準など実はアメリカンスタンダードに過ぎないものをグローバルスタンダードとしてしまう強い影響力を持つ。

中国は巨大な人口を裏付けとする自国の潜在市場規模と軍事力を背景に、力づくでものごとを動かそうとする傾向がある。

ロシアは国土が広大で天然資源が豊富であり、エネルギー産業を国策として展開している。ガスプロムやロスネフチといった国策エネルギー企業がその代表格である。

ブラジルは、食糧が豊富で巨大な人口を支えて余りある。鉄鉱石やボーキサイトなどの鉱物資源も豊富で、今後有望である。

これらの「持てる国」の勝ちパターンに対して、「持たざる国」は独自の勝ちパターンを持つ。「持たざる国」で勝ちパターンを持っているのは韓国、台湾、シンガポールである。

韓国は、国土面積も人口も経済力も小さいが、財閥系の特定企業集団が一点集中の産業政策をとることで世界に乗り出している。国の政策として、空港や港湾をそれぞれ仁川と釜山に集中することで世界に打ち出している。

台湾は、国土面積、人口、経済力ともに韓国よりもさらに小さいが、国策としてPCや半導体製造、液晶パネルなど特定産業を強化し、自動車や家電製品などの産業を実質的に切り捨てる政策である。中国との地縁や血縁を活用しており、特に福建省とのつながりが深い。

シンガポールは何も持たない国であり、中継貿易と組み立て・加工産業からスタートしたが、現在は金融、サービス、交通、物流などアジアのハブとして生き残りを賭けている。チャンギ空港やシンガポール港は世界有数である。マレーシアやインドネシアといったアジアの後背地を活用する。華人ネットワークを強みとしており、中国を後背地とする香港が競争相手である。

近年では中東で産油量が少ない「持たざる国」のドバイが、シンガポールや香港と同じ勝ちパターンで頭角をあらわしている。

これらに対してイギリス、フランス、イタリア、オーストラリア、インドなどは「持てる国」にも「持たざる国」にも当てはまらない「中途半端に持つ国」である。特に欧州のイギリスやフランスやイタリアは、歴史や文化や観光のような無形の伝統的な文化遺産を活用して、世界に対して一定の影響力を保ちつつ独自の路線で生き残りを図っている。

日本は、新たな勝ちパターンをゼロから探すべき
では日本はどうか。既に成熟期から衰退期に移りつつある日本は、「中途半端に持つ国」から「持たざる国」に転落する危機にある。「持つ」「持たない」は絶対的な位置づけではなく、相対的な位置づけである。人口(世界10位)やGDP(世界3位)の絶対的な数字が実際に大きく減少をしているわけではない。現状維持か、やや低下している程度である。しかしながら、日本以外の国々の人口やGDPが急激に増加しているために、相対的には日本の位置づけはどんどん低下している。かつて世界1位だったこともある一人当たりGDPは世界のトップ10からも陥落し、今や、シンガポールやマカオよりも下位である。

成長期を急激に通り過ぎたために成熟化も急速であり、今が正念場である。欧州やアジアの小国をモデルに、成熟期でも勝てる独自の勝ちパターンを見つけ出す必要がある。何もしなくとも自然に日本の力が再び盛り返すなどということを期待するのは現実的ではない。

勤勉で高い教育水準を持つ国民が多く、国が方向性を示せば一つにまとまる国民性があるので、正しい政策を打ち出すことが望まれる。米国のようなベンチャー企業重視でもなく、韓国のような大企業重視でもない、新しい産業政策が必要だろう。

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