グローバルビジネスで戦える人材になるためのヒント"The Essence of BBT"
アフリカ経済を読み取ってビジネスチャンスを掴む

アフリカは高い経済成長率を記録しているが、それは何故で、その中で日本企業はどうすれば良いだろうか。対開発途上国外交において①資源安全保障、②資源開拓と輸出促進、③相互利益による外交関係の安定など様々な課題があるが、その中で将来の日本にとって望ましい国際関係はどのようなものだろうか。今回は平野克己氏(日本貿易振興機構アジア経済研究所上席研究員)に、アフリカ経済成長の状況やその背景を、産業構造や貿易構造、都市と農村の状況や投資の概況など幅広い観点からアフリカ経済を俯瞰し、日本企業はどのようなアフリカビジネスを行えば良いかについて指摘してもらった。
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●アフリカ経済が成長している理由
名目GDPベースでサブサハラ・アフリカを見ると、1980年まで高い成長率を維持していたが、その後2002年まで殆ど成長しない時代(年平均成長率は1.5%)が続いた。状況が変わったのが2003年で、原油高を受けて飛躍的に成長している。(実際、サブサハラ・アフリカのGDPと原油価格の相関は高い。)2003~2007年は年平均で19.3%、2008~2011年は年平均で9.5%の成長率を記録している。

その経済成長を支えているのは個人消費であり、2003~2010年の成長要因を分解すると、63.5%が個人消費(世界平均は54.6%)で、消費爆発が起こっている。また、鉱業の24.2%(世界平均は6.7%)と農林水産業の13.3%(世界平均は3.6%)という高さ、製造業の8.7%(世界平均は17.6%)という低さも特徴的である。

貿易面から見ると、アフリカの成長に拍車をかけているのが海外からの投資であり、その資金で資源を生産・輸出し外貨を得、その外貨で財を輸入し、貿易赤字となっている。輸出品の構成を見ると、鉱物性燃料が年々増え続け輸出額の6割に達し、製造業製品・鉱産物・食料農産品の割合は減少し続け、産油・鉱業大陸化が進行している。資源輸出先の大半は米中であるが、中国が増加し続けているのに対し、米国はリーマンショック以後の輸入減少とシェールガス革命によって最近は輸出額が減少している。

ここまでで分かるように、アフリカの経済の成長は輸入が輸出を上回る内需主導型の成長であり、鉱業中心になっている。天然資源に依存するレント経済はかえって生産部門を後退させるオランダ病を引き起こす事があり、雇用の停滞や所得の不均等化などを起こしかねない。例外もあるが、基本的には資源依存からの脱却を目指すべきだろう。特に資源ブームに終わりの兆しがある上、新興国経済の減速、資源メジャーが不採算部門を売却する傾向など資源依存の経済にはリスクが多い。

●日本とアフリカの経済関係
日本の対アフリカ貿易比率を見ると、日本が加工貿易を行っていた1970年くらいまでは輸出入とも日本の貿易総額に占める割合は多かったが、その後急速に下落して推移している。一方で対南アフリカからの輸入は1970年代から現在までシェアに変化は見られないが、これは自動車のマフラー生産向けに多量のプラチナを輸入しているからである。対アフリカからの輸入額が近年再び増加しているが、これは原油価格上昇が主な理由である。

日本からアフリカへの輸出品目を見てみると、自動車が主要産品となっているが、最近は輸出額が大幅に減少している。割合が少ないながらも一般機械や電気機械の輸出額は安定して増加している。但し、世界からのアフリカへの輸出額を見てみると中国が独走しており、日中を比較しても電気機械・一般機械の輸出は圧倒的に中国が多く、リーマンショック以降は自動車など輸送機械の輸出額も中国が多くなっている。

●中国のアフリカ政策
中国がアフリカとの貿易で突出している背景には、資源効率が悪い中国が高成長を維持する為には資源確保が不可欠で、その為にアフリカとの貿易が重視された事がある。その準備は江沢民時代から行われている。こうしたアフリカ政策は嘗て日本が東南アジアで行っていた経済協力政策と類似し、実際に日本の政策が研究されている。

更に中国は並外れた外交努力によって広範な対アフリカ関係の構築に成功している。この動きに対し、欧米のメディアは新植民地主義と批判したり、アフリカも旧宗主国のフランスやイギリスの方を高評価する傾向もあるが、中国が対アフリカ政策を弱める事は無く、最近は対中批判をやめ、世界銀行と中国の連携・米中連携・英中連携といった「個別連携」への動きへと進んでいる。

●南アフリカ企業の躍進
前述の通り南アフリカはプラチナ輸出が多いが、輸出入の状況がアフリカ域内貿易と域外貿易では異なり、域外貿易では赤字だが域内貿易では黒字となっている。その背景には南アフリカ企業がアフリカ市場に精通しており、積極的にリスクを取っている事がある。消費爆発に伴うビジネスチャンスをうまく勝ち取り、国際展開する南アフリカ企業も多い。

●アフリカの穀物依存と製造業の停滞
アフリカでは都市と農村の分離が進んでおり、傾向としては都市化が進んでいるが、それに伴い穀物の輸入依存率が上昇し続けている。穀物など輸入食品は高く、物価を押し上げる傾向があり、それに応じて賃金が上昇するので、間接的に製造業を停滞させる要因となっており、現にアフリカの製造業があまり成長していないという問題がある。

●日本企業はどう対応すれば良いか
成熟国であり経済が停滞している日本には課題が3つあり、それらがアフリカと深くかかわってくると考える。労働投入減少にどう適応するか、巨大化する中国とどう向き合うか、ポスト・フクシマのエネルギー政策をどうするか、問題は山積である。こうした中で日本企業が生き残るには、輸出力・収益力を高める必要がある。

アフリカでの有望な新ビジネスに資源ビジネスがあるが、日本からも三井物産やINPEXによるモザンビーク沖天然ガス田開発など活発に行われており、これはポストフクシマのエネルギー政策にもつながっていく。事業分野を絞らずに見れば、第1回で紹介したような味の素や住友化学、NTTなどアフリカで活躍する日本企業は多い。また世界的に見ても日本が強い素材産業や部品産業分野での進出も可能性があるだろう。

アフリカでビジネスを成功させるには、まずはグローバル戦略ありきでアフリカ戦略を考える事が重要だ。良いパートナーを時間をかけて見つける事は重要で、公的機関との連携も重要である。M&Aを有利に進めるには円高時が良いタイミングだが、M&Aによって人材やネットワークを入手する事も不可欠である。

また、アフリカ1国では経済規模が小さいので、アフリカ全体をターゲットにした事業を行う事が重要である。事業にCSRを組み込む事もポイントだ。

とは言え、製造業の観点で見ると、アフリカは経済水準に比べれば高賃金である。アフリカの農村など低賃金の地域は衛生状態の悪さなどから労務コストが高くなる事がボトルネックとなっており、アジア型の成長がアフリカでも実現されるかは難しい所だが、アフリカをビジネスの道場ととらえ、ぜひ多くの企業に挑戦してほしい。

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