日本語/English
TOP ニュースリリーストップ イベントレポート 組織人事セミナーレポート 「時代に応じて変化する現場にどう対応するか」

組織人事セミナーレポート 「時代に応じて変化する現場にどう対応するか」

2017年1月17日


組織人事セミナー 「時代に応じて変化する現場にどう対応するか」
講師:高橋俊介氏 (慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科特任教授)
パネラー:大屋裕之氏 (コニカミノルタ株式会社)/河辺恵理氏 (SCSK株式会社)


株式会社ビジネス・ブレークスルー(BBT)の法人営業本部は、2016年10月20日(木)、「時代に応じて変化する現場にどう対応するか」というテーマにて組織人事に関するセミナーを実施しました。当日は、慶應義塾大学大学院政策メディア・研究科特任教授の高橋俊介氏によるご講演のあと、コニカミノルタ株式会社大屋裕之氏とSCSK株式会社河辺恵理氏をパネラーとしてお迎えし、パネルディスカッションを行いました。
 急速に変化し続けるビジネス環境の中で各社がビジネスモデルの変革を迫られる中、人材マネジメントはどのようにあるべきか、経営と人材育成はどういう関係にあるべきかという点について深いディスカッションが展開されました。

高橋先生.jpg
◎BBTの法人向けグローバル人材育成  http://www.bbt757.com/pr/topics/868/
※ビジネス・ブレークスルーについて・・・グローバル環境で活躍できる人材の育成を目的として1998年に世界的経営コンサルタント大前研一により設立された 教育会社。設立当初から革新的な遠隔教育システムによる双方向性を確保した質の高い教育の提供を目指し、多様な配信メディアを通じてマネジメント教育プログラムを提供。法人向けグローバル人材育成にも力を入れています。


【レポート】

講演:「経営視点の組織人材マネジメント」高橋俊介氏

●「経営視点の組織人材マネジメント」とは
 マッキンゼー時代、経営コンサルタントとして企業に戦略変更を提案する機会があったが、組織や人事がネックとなって話が進まないケースが多かった。人事担当者は経営視点をもたず、経営を把握していないことに愕然とした記憶がある。以来、日本企業の最大の問題は人と組織にあり、戦略だけ変えても意味がないと痛感している。では、経営視点で人材マネジメントを考えるとは具体的にはどのようなことを指すのか。
 多くの日本企業は、「事業ビジョン」を描くことはできてもそれを実現できる人材がいないという状況に陥っている。「事業ビジョン」とそれを実現する「組織人材ビジョン」は主従関係ではなく同時にセットで考えられるべきものなのである


●「3点死守」は当たり前。「どこで5点を取るか」が戦略
 どんな事業でも、顧客が重視する提供価値は複数ある。例えば外食産業なら、価格、味、メニューの豊富さ、サービス、雰囲気、立地などだ。これらの提供価値をそれぞれ5点満点で表した時、オール3の状態がいわゆる「優位性が無い状態」であり、その企業は価格競争に巻き込まれ疲弊する。すべての提供価値で必要最低限の3点を死守することが大前提。その上でいくつか5点を目指し差別化する。オール5というのは論理的に不可能であり、中長期的に維持できる戦略を立てる必要が出てくるが、その戦略によって実現できる組織や人材が異なってくるのである。


●3つの人材像
 価値を創造、提供し、利益に繋げるのはどんな人材のどんな行動か、それを生む組織や人材マネジメントはどうあるべきか、それが組織人材ビジョンである。ビジョンに必要な人材像は3つに分けられる。

①「確実に3点の価値を創造提供できる人」
 マストである3点維持のスキルは業界の標準的なものであり、マニュアル制作や外部経験者採用で賄うことができる。
②「差別性優位性の源泉である5点の価値を創造提供できる人」
 いくら3点を死守しても5点の価値がある仕事にはならない。5点の創造はマニュアルで標準化できず、同業他社からの即戦力採用も難しい。「わが社らしく」育成すること、独自の人材育成・人材マネジメントが必要となる。
③「ビジネスモデル/事業ビジョンそのものを新たに作り上げる変革創造のリーダー」
 新しいビジネスを起ち上げる人材。こうした人材の自社での育成のむずかしさが大企業の大きな悩みとなっている。


●「製品価値」から「ソリューション価値」への転換
 第一線で活躍する5点を生む人材をどう育てれば良いか。これを読み解くキーワードに、製品価値からソリューション価値への転換がある。日本企業がビジネスモデルの変化についていけなくなった主因もこの転換にあると言える。世界がソリューション価値に舵を切った転換点は1993年だ。「製品価値」を提供していれば十分だった時代から、顧客自身が必要なものを理解していないという時代に変わった。そして「ソリューション価値」の提供が求めれるようになった。マッキンゼー時代、「顧客に欲しいものを聞いてはいけない。見たことのないものを欲しがることはできないからだ。顧客が見たことのないものを見せるのが仕事だ」と言われたことがあるが、これこそがまさに「ソリューション価値」である。

 例えば手作業を自動化するという話であれば、顧客自身も自分のニーズを意識しており、ベネフィットも理解しやすい。しかし、クラウド等を組み合わせたより複雑な内容になると、具体的に企業の戦略にどう貢献するのかが顧客には見えづらくなってしまう。顧客に価値を生み出すよう様々な要素を組み合わせて、ベネフィットを見せながら提案していくことが求められるが、これこそがソリューション提案なのである。ソリューション提案とは、第一線にいるビジネスパーソンが顧客に提案し、リードしていくとういビジネススタイルであるため、製品価値提供のために必要な人材とは人材像が根本的に異なるのだ。


●人材像実現に向けて
 事業ビジョンに合った人材像を実現するにはどうすれば良いか。新事業では自社内にモデル人材がいないことが多い。経験が無い事業では、適する人材像の見当をつけることも難しい。その場合、国内の別業界や、海外に目を向け、似た事例を探すのも一つの方法であると言える。さらに、5点の価値を創造するためには「仮説検証の試行錯誤改善のスピードが勝負」になる。5点を生む過程は失敗も多いので、いかに試行錯誤するかが問題だ。仮説検証を可視化し、ダブルループ化することでスピード感を高める。ダブルループとは、例えばリーダーが行う仮説検証と、リーダー選択の仮説検証をダブルループにする。
 もう一つ、注意すべきこととして「表面的なマッチング」がある。要するに「その仕事に憧れる人と、その仕事に向いている人は違う」ということだ。現場の人間が採用に関わると似たような傾向の人が増えることが多く、人材ポートフォリオが偏ってしまう。変化に対応力できる組織に必要なのは多様性であり、人材の多様性を確保することがリスクヘッジになるのだ。


●組織マネジメントの基本的枠組み
 人材をマネジメントのための組織として適しているのはピラミッド組織なのか、自律組織なのか。What、How、Do、Checkのサイクルを組織序列で分業する組織なのか、第一線が回す組織なのか。職務特性によって適する組織は異なるが、自律的で多様性の高い組織ほど、抽象度の高いメッセージの伝達が必要となる。チェックのサイクルを第一線で自律的にまわすというのは、5点の創造を組織で分散的にやるということになるので、組織全員が基本的な考えを理解していなければならないからだ。
 組織設計を行う際に落とし穴になりがちなのが「判断能力・情報・権限の一体化」である。権限移譲は簡単だが、自律組織は権限を移譲するだけでは成り立たない。情報提供と判断能力開発のプロセスをどう設計していくかが重要なのだ。権限だけで、権限を使いこなす判断能力と、判断に必要な情報が無ければ、誤った判断をしてしまう。中央に権限を集中させる場合も、中央に現場の情報が入らないとこれもうまくいかない。故に3つをセットで考えることが必要だ。権限だけで話をしない、ということを意識しなければならない。


●人は万能ではない。「人材ポートフォリオ」という発想
 人間は自身の仮説に合った事実のみ強く記憶する傾向がある。特定の属性についてステレオタイプがあると、それに該当する人を見つけるとその仮説を確信し、ステレオタイプにあてはまらない人を見ても無意識に除外してしまう。
 こうした傾向は「優秀な人」の固定化にもつながる。特にジェネラリスト志向が強い日本企業では、人の評価が早期に固定化しやすく、「優秀な人」が普遍化されてしまう。その人が主導となって新事業を進め、たとえ失敗しても同じタイプの人をリーダーにし続け、また失敗を繰り返すといった事が起こってしまうのだ。  新事業において、特にリーダーの人材像は既存事業と大きく異なる。そのため、リーダー人材の多様性が乏しいと、環境変化に対応できなくなる。リーダーの育成には時間がかかるので、「人材ポートフォリオ」という発想が重要である。例えば、特定のステレオタイプを持ってリーダー選抜や育成の基準を決めないなどの考え方を取り入れ、リーダー人材の多様性を保っておくことが大切なポイントである。
 ポートフォリオ形成時も、単純に基準を誰かに当てはめるのではなく「人は万能ではない」ということを肝に銘じて、当人の個性なども考慮して人材育成にあたるべきである。



事例紹介、パネルディスカッション等詳細はこちら http://www.bbt757.com/pr/topics/1435/



【BBTの法人プログラムについて】
 BBTの法人営業本部は「世界で活躍するグローバルリーダーを育てる」をモットーに、オンライン、集合研修等様々な手法でマネジメント研修プログラムの企画・提供をしており、延べ1,000社以上の企業への導入実績を持つ。 特に法人営業2部は、グローバルビジネスに特化したコンサルティングや教育コンテンツの提供を主に行っており、異なる言語、異なる文化を背景とする人々の中でどのようにビジネスをけん引し、結果を出すかという点に特化したコンサルティングや、グローバル人材を育成する研修プログラムの企画・提供を行っている。


【イベントレポート】組織人事セミナー.pdf
BBTの法人向けグローバル人材育成