顧客創造のために不可欠な「マーケティング」と「イノベーション」。
【ドラッカーの格言から学ぶマーケティング入門 第1回】

顧客創造のために不可欠な「マーケティング」と「イノベーション」。【ドラッカーの格言から学ぶマーケティング入門 第1回】
今月から、Bond-BBT MBAプログラムの修了生で、特定のビジネス領域に専門性の高い方々にご協力いただきオンライン勉強会(連載記事)を開始いたします!

記念すべき第1回は、6期生の早嶋聡史さんです。早嶋さんはBond-BBT MBAの仲間たちと、中小企業の経営コンサルティングを行う株式会社ビズ・ナビ&カンパニー、中小企業のM&Aを支援する株式会社ビザインを起業。同じく仲間たちと小規模M&Aの普及を目指す一般社団法人 日本M&Aアドバイザー協会を立ち上げ、コンサルタントとして日々ご活躍をされています。

ドラッカー学会会員でもある早嶋さん。20代後半で当時勤務されていた会社をご退職されてビズ・ナビ&カンパニーを立ち上げられたのですが、そのタイミングでドラッカーの著書『現代の経営』と出会い、ドラッカーに引き込まれていかれたそうです。ドラッカーの著書にはマーケティングに関わる記述が実に幅広くまとめられているのですが、今回から始まる連載では、その中からドラッカーの言葉を引用しながら、マーケティングに不可欠な知識や考え方をご紹介していきたいと思います。

MBAを受講するなら最低限知っておきたいフレームワークや考え方をドラッカーの格言を引用しながら学ぶマーケティング入門講座です。第1回は顧客創造のために不可欠なマーケティングとイノベーションについてご紹介します。

そもそも、企業が存在する目的は何なのでしょうか?

ドラッカーの格言の中で最も有名な言葉が「企業の目的は顧客の創造である」です。

企業の目的といえば「売上や利益を上げること」だと考えそうですが、その源泉は顧客がもたらします。そのように考えると、企業の目的を「顧客の満足」として捉えても良さそうですが、顧客は社会に属し、その社会は時代と共に変わり続けます。従って一度得た満足は次の瞬間から陳腐化していくと言えるでしょう。

また、顧客は自分自身が何を欲して何に満足したいのか、自分自身が理解していない場合も多いものです。したがって、顧客の満足を追求するだけでは常に後手に回ることから企業の目的としては十分ではありません。

そこで企業が自ら市場を創造し(つまり、顧客が潜在的・顕在的にもっている欲求を有効な需要に変えていくということです)、未来を作り出すことの重要性を込め、企業の目的とは「顧客の創造」であるとドラッカーは説いているのです。

顧客を創造し続けるために必要な「企業の基本的機能」とは?

ドラッカーは、顧客を創造し続けるために必要な企業の基本的な機能は2つあると言っています。それは、マーケティングとイノベーションです。

マーケティングの理想は「販売を不要にすること」で、顧客を良く理解し、顧客の欲求を満足させる手段として製品やサービスを提供します。完全にこのサイクルが回れば企業は自ずと売上が発生します。つまり、自然に売れてしまう状態が出来上がり、理想のマーケティングの姿になります。

もう一つの機能であるイノベーションは「新しい満足を生み出すこと」です。既存のものは古くなります。完全に販売を不要にしたかと思えば、社会の変化に応じて、顧客の欲求が変化します。そのため、企業は絶えず変化に対応することが求められ、その変化に合わせて随時、顧客の欲求を満足させ続けることが大切です。

マーケティングとイノベーション。この2つの機能は双方が補完関係にあるものではなく、常に同時に考えて行わなければなりません。しかし、マーケティングとイノベーションはいわば「創造」と「破壊」を意味しますので、同じ組織の中で同時に実現することは極めて困難です。仕組みを作りながらも、その仕組みをゼロベースで破壊していくことを求められるからです。

多くの大企業は、1990年前後に現在のキャッシュカウ(稼ぎ頭のビジネス)に相当する収益事業の仕組みを作りあげています。バブル崩壊後も試行錯誤はしてきましたが、主力事業の収益をベースに組織が構築されてきたため、最も安定している組織が自ら自分たちの事業を破壊することは非常に難しいことが想像できます。

20~30年以上続いている資本が大きい企業で、順調に社会の変化に対応して顧客の創造を行っている企業は、事業ポートフォリオを10年から20年程度のサイクルで大きく変化させています。一方、急に経営不振に陥っている企業は既存のビジネスが先細りすることを理解しながらもイノベーションに取り組むことができていません。

日本をマクロで捉えてみると、少子高齢化により経済活動が鈍化、あるいは低迷していると言えます。更に10年、20年前と比較したら世帯構成も変わり人々のライフスタイルは激変しています。また、ITやインター―ネットの発達によって、新しいビジネスモデルが旧来のビジネスモデルを破壊し、数年前までは誰も知らなかった小資本の企業が大資本の企業を真っ向からつぶしにかかっています。グローバルでは日本が低迷していた20年の間、新興国が猛追し、国境の境目なくビジネスを行うようになっています。

2つの機能であるマーケティングとイノベーション。片方だけでは顧客の創造ができない、それは常に社会の変化によって生み出されたものが陳腐化していくからです。今回、一連の連載でマーケティングを中心に議論しますが、「販売を不要にする」仕組みに終わりはなく、常にイノベーションを忘れてはならないのです。

次の回からは、マーケティングにフォーカスして、どのような流れで「販売を不要にする」仕組みを作るのかを考えていきます。

講師プロフィール

hayasima

早嶋 聡史 氏
株式会社ビズ・ナビ&カンパニー 代表取締役
株式会社ビザイン 代表取締役
一般社団法人 日本M&Aアドバイザー協会 理事

国立九州工業大学 情報工学部 機械システム工学科 卒業、オーストラリア ボンド大学 大学院 経営学修士課程(MBA) 修了。
横河電機株式会社において、R&D(研究開発部門)、海外マーケティングを経験後、2005年11月に株式会社ビズ・ナビ&カンパニーを設立し、マーケティング担当取締役に就任。2012年4月に代表取締役に就任。2007年株式会社ビザインを取締役パートナーとして設立、2009年代表取締役就任。中小企業の友好的M&Aへの理解・普及活動、M&Aアドバイザー養成を手がける。専門分野は、ビジネス統計分析、マーケティング戦略とコーポレートファイナンス。

企業の目的の定義は一つしかない。それは、顧客を創造することである。(Bond-BBT MBA事務局より)

「企業とは何かを知るためには、企業の目的から考えなければならない。企業の目的は、それぞれの企業の外にある。企業は社会の機関であり、その目的は社会である。企業の目的の定義は一つしかない。それは、顧客を創造することである。」(ドラッカー著『マネジメント エッセンシャル版』より)

ドラッカーの書籍を読まれている方であれば、こちらの内容はよくご存じかもしれません。今回の記事は、こちらの内容をもとに、そもそも企業の目的は何で、それを果たすためにどのようなことが求められるのか?という点にフォーカスして企業活動について考えを巡らすきっかけになるのではないでしょうか。

企業に必要な基本機能であるマーケティングとイノベーション。皆様の職場ではどのように機能していますでしょうか?あるいは、どう機能させていく必要があるでしょうか?身近なネタをもとに考えることで、それぞれに対する理解はさらに深まるのではないでしょうか。

今後もほぼ月に1回のペースで、マーケティングについて理解を深め、考えを巡らす上で勉強になる記事をご紹介していきたいと思います。次回もお楽しみに!

▼次回以降の記事はこちら
第2回:部分最適に陥るな!マーケティングプロセスをまず理解する。
第3回:企業の成長も衰退も定義次第。

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