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あなたなら、リスク(機会と脅威)を予測しどう動くか?(前編)マクロ分析とミクロ分析【ドラッカーの格言から学ぶマーケティング入門 第5回】

4月からスタートいたしました、Bond-BBT MBAプログラム6期生の早嶋聡史さんによるオンライン勉強会「マーケティング入門」。MBAを受講するなら最低限知っておきたいフレームワークや考え方をドラッカーの格言を引用しながら学ぶマーケティング入門講座です。第5回目は、「あなたなら、リスク(機会と脅威)を予測しどう動くか?」というテーマで「マクロ分析と環境分析」について取り上げたいと思います。

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第1回:顧客創造のために不可欠な「マーケティング」と「イノベーション」。
第2回:部分最適に陥るな!マーケティングプロセスをまず理解する。
第3回:企業の成長も衰退も定義次第。
第4回:顧客は製品・サービスを買っているのか?

危機には「危険」と「機会」の意味がある。

ファイナンスの概念を学ぶ際、リスクの概念を考察し理解を深めます。日本語では「危機」と訳されるリスク、「危険」と「機会」という対局の意味を含んでいます。経営戦略を立てる際も、3C分析やPEST分析等を基に企業を取り巻く事業環境が将来にわたりどのように変化する可能性があるかを推察し、戦略を立案します。

その際、今起こっている事象を事業にプラスに捉えると機会となり、マイナスと捉えると危険、もしくは脅威となります。日本語の危機は両方の方向性を含んでいます。分析した後に、それをどのように判断し、どのようにマーケティング活動に結び付けるかは担当者の腕の見せ所となる、これが環境分析の醍醐味でもあります。

「すでに起こった変化」を見つけ、どう活かすか?

ドラッカーは、著書「実践する経営者」の中で、先が見えない時代においては「すでに起こった変化」を考えることを奨励しています。新しい戦略やアイデアは人が生み出すイノベーションによって切り開かれたと認識されることがありますが、多くの場合、「すでに起こった変化」を活用してイノベーションを起こしていることが多いのです。


イノベーションとは論理的な分析であるとともに、知覚的な認識である。イノベーションを行うにあたっては、外に出て、見て、問い、聞かなければならない。

(イノベーションと企業家精神)

ドラッカーはその変化を見つけるときに1次データの重要性をたびたび指摘しています。そのために、実際に動いて肌で感じる旨のメッセージを多く発信しています。環境分析は、マーケティング活動を進めるプロセスの中でも基盤となる分析です。企業が置かれている環境を大きく2つに分け、大きな視点であるマクロ環境分析と小さな視点であるミクロ環境分析の2つに分けて進めます。


われわれは自らの組織の外の世界、市場、顧客についてあまりに知らなすぎる。

(ネクスト・ソサエティ)

とドラッカーが指摘するように、自社以外に事業環境を少し俯瞰して「世の中ではどのようなことが起き、今後どのようになるのか?」を絶えず考えることが大切です。また、実際に企業が活動している事業環境を細かく見ることも大切です。そしてドラッカーが指摘するようにただ2次情報を広く集めて分析するのではなく、絶えず1次情報として自分の肌で感じながら分析結果をマーケティング活動に結び付けることこそ実務に活きる考え方なのです。

マクロ分析でよく活用されるPEST分析とは?

マクロ分析を進める際に、PEST分析はよく活用されます。ドラッカーは既に起こった未来と表現し、それらの存在場所は組織の内側ではなく外側にあると言っています。それらは社会や知識、文化や産業、そして経済構造における変化を捉える重要性です。

PEST分析の基本は政治・法律・規制などのP(Politics)と経済動向のE(Economics)と社会的な変化のS(Society)、そして技術動向のT(Technology)を俯瞰的に見て、それから企業を取り巻く変化を推測するための考え方です。MBAでは他のフレームワークも沢山学び環境分析に取り入れますが、ポイントは「既に起こっている未来」を切り取り将来のマーケティング活動に活かすことです。そのためには絶えず1次情報として肌で感じていることも大切です。

ミクロ分析でよく使われる3C分析とは?

ミクロ環境の分析は、マクロ環境ともラップする部分がありますが、通常は市場や顧客の分析、競合や代替する事業の分析、そして自社や協力会社の分析と3つの方向性について事業環境を整理します、いわゆる3C分析です。

顧客や市場環境の分析も様々な分析手法が存在しますが、前回も指摘したように、分析だけを進めて頭でっかちにならないことです。


顧客にとっての価値を想像してはならない。直に聞かなければならない。

(マネジメント)

ドラッカーの時代と比較してこのことが実現するための分析はアナログの手法に加えてデジタルの手法が多数でてきています。ITに詳しくなくても良いのですが、その手の分析や考え方を活用できるマインドはこれから養っていくことが大切になります。

競合分析は、常にあらゆる可能性を探ります。「競争相手は同業他社にとどまらない(創造する経営者)」「「産業構造に大きな変化は起こっていないか」を検討しなければならない。(創造する経営者)」でも示されている通り競合の定義をゼロベースで行うことがポイントです。そのために、マクロ環境の理解や市場の理解は極めて重要で、それらがベースに競合の理解があると考えると、分析は独立しているものではなく、一つのシステムとして絡み合っていると考えた方がベターです。

最後は自社分析です。そしてこれは意外と難しい。授業で他社の分析をする際は、客観的な分析ができるのですが、実際の事業を推進している自分の企業を分析する際は判断が鈍ります。


誰でも自分の強みはわかっていると思う。たいていが間違いである。知っているのは、強みというよりも強みならざるものである。それでさえ間違いのことが多い。

(明日を支配するもの)

自社の分析では自社の強みや弱みを抽出して、今後の活動に活かしていきます。素晴らしいビジネスチャンスがあっても、どのように活用するかは自社の資源が明確でなければ対応が難しくなるからです。しかしその強みや弱みは、あくまで相対的な概念であり、強みは陳腐化しては意味がなく、ビジネスに活用されてはじめて意味が出てくることを理解することがポイントです。

環境分析で進めるマクロ環境分析とミクロ環境分析で抽出したポイントを整理した後は、これらをベースに先の環境をイメージし、自社の戦略を立てる流れになります。これについてはまた次号で解説します。

次の回は、リスク(機会と危機)を予測してどう動くか?の後編、クロスSWOT分析について理解を深めていきます。

講師プロフィール

hayasima

早嶋 聡史 氏
株式会社ビズ・ナビ&カンパニー 代表取締役
株式会社ビザイン 代表取締役
一般社団法人 日本M&Aアドバイザー協会 理事

国立九州工業大学 情報工学部 機械システム工学科 卒業、オーストラリア ボンド大学 大学院 経営学修士課程(MBA) 修了。
横河電機株式会社において、R&D(研究開発部門)、海外マーケティングを経験後、2005年11月に株式会社ビズ・ナビ&カンパニーを設立し、マーケティング担当取締役に就任。2012年4月に代表取締役に就任。2007年株式会社ビザインを取締役パートナーとして設立、2009年代表取締役就任。中小企業の友好的M&Aへの理解・普及活動、M&Aアドバイザー養成を手がける。専門分野は、ビジネス統計分析、マーケティング戦略とコーポレートファイナンス。

危機を「危険」で終わらせるか「機会」にするか。(Bond-BBT MBA事務局より)今回の記事はいかがでしたでしょうか?

冒頭でも紹介がありましたが、「リスク」を日本語にすると「危機」に訳されます。あるリスクマネジメントの大家も指摘しているのですが、リスクがもつ両側面を「危機」という言葉はうまく言い表しているとのことです。起きた事象を「危険(ピンチ)」で終わらせるのか、「機会(チャンス)」に変えていくかは本人の判断次第。たとえ窮地に追い込まれたとしても、そこから機会を掴みとり飛躍へとつなげていきたいですね。

これは事業だけでなく、個人にも当てはめることができると思います。皆様が置かれている環境を分析したとき、皆様にはどのような「危険」と「機会」がありますでしょうか?それを冷静に読み解き、ご自身のキャリアを築く上での指標にされるとよろしいかもしれません。

その結果、「危険」を乗り越え「機会」を手にするために必要な要素のひとつがMBAで学ぶことを通して得られるようでしたら、ぜひ本プログラムの門を叩いていただければと思います。皆様のチャレンジを心からお祈りしています。

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第1回:顧客創造のために不可欠な「マーケティング」と「イノベーション」。
第2回:部分最適に陥るな!マーケティングプロセスをまず理解する。
第3回:企業の成長も衰退も定義次第。
第4回:顧客は製品・サービスを買っているのか?

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