close

【第1部】地図情報サービスを通してインドをもっと豊かに!インド進出請負人・二宮祐氏の挑戦(二宮祐さん)

今回ご紹介するのは、Bond-BBT MBAプログラム2期生として学ばれていたこともあり、現在は大前研一が主宰する経営者ネットワーク「向研会」会員でもある二宮祐さんです。インドで長くビジネスに携われる中で、大手企業3社のインドビジネス立ち上げに関わってこられてきた二宮さん。一部のメディアでは「インド進出請負人」とご紹介されるほどの実績をお持ちです。現在はゼンリンのインド拠点を立ち上げられ、その代表を務められています。

ゼンリンといえば、位置情報サービスを提供している会社として有名ですね。皆様もご存じではないでしょうか。今回から始まる計3回にわたる連載では、インドでの二宮さんの仕事と、日本にいてはなかなか見えてこないインドでのビジネスの現状についてご紹介していきたいと思います。

Q. 現在のお仕事の内容についてお聞かせいただけますでしょうか。

現在、私は地図サービスを提供しているゼンリンのインド支店長(Country Manager)を務めています。インドの地図会社に出資をし、弊社と現地の技術を組み合わせて質を高めていきながらソリューションを提供しています。

具体的に挙げると、まずはカーナビに代表されるITS。インドではまだ5%くらいのカーナビ普及率しかないのですが、在印日系の自動車メーカーにサプライヤーを通し地図サービスを提供しています。日本車がインドでは自動車市場のシェアを半分以上もっているので、彼らはとても大切なクライアントです。

それ以外はエリアマーケティングの地図サービス。地図情報に男女比率などのような情報を組み合わせてビジネスの意思決定ができるような支援サービスを行っています。チェーンストアの出店計画、電気が通っている村がどこかを知る目的での家電メーカーの利用、哺乳瓶等 乳幼児用品の小売店開拓計画を立てるために小さい子どもがどこに多くいるかを調べるための利用などが用途としてはあり、インドのような巨大でエリア毎にトレンドが異なる状況を可視化できる事でインド進出を考える日本企業の方から多くの引き合いを頂いております。

その他には、移動体管理も提供しています。地図とGPSを取り付けた自動車の位置情報サービスを組み合わせ、自動車の配送管理などをする際に使われます。Uberなども使うソリューションですよね。

本業は以上のような内容になるのですが、休みのときには自分の出身地(鳥取県境港市)がある山陰(鳥取・島根県)の地域創生に関わっています。山陰インド協会のインド支部があり、インドと山陰の文化交流や中小企業のインド進出にボランティアとして関わっています。出身地への貢献はここ10年自分のライフワークだと考えています。 向研会で大前先生がイタリアをテーマに地域創生のヒントを説かれました。山陰は海外の市場を取り込む等の工夫次第で「地方都市国家」になれる、と考えています。

また、中小企業のインド進出についてはロジスティクを始め、位置情報と関係する部分も多く、日本政府関係機関のご紹介で山陰以外の地方からの問い合わせも相次でおります。

この地方創生の活動が関西の中堅都市から本業のビジネスの発注を頂き、首都圏の政令指定都市から具体的は商談も開始され、公私ともに相乗効果を生み出すこともできています。

Q.地図情報のコモディティ化が進み、日本では地図ビジネスが収益を上げにくくなってきていると言われています。そのような中で、インドに着目されたのはなぜでしょうか?

Mumbai (India)

個人の視点と企業の視点、それぞれでお話ができればと思います。

まずは個人の視点から。私が45歳のときに大前先生の本を読んでいたのですが、そこには「自分がどのレベルかを確認しろ」「自分の値札をいくらかを確認しろ」といった主旨のことが書かれていました。その当時に勤めていた企業にこのままいても、できる仕事の内容が限られている。先がないのではないかと感じました。サラリーマンとして限界にぶち当たるなと。何か尖った存在にならなければと考えていたのですね。

当時は人事総務の仕事をしていました。やりがいは感じていましたが超プロフェッショナルでない自分は所詮ONE OF THEMであり「何かあったら自分は誰かと置き換えられるな。」と常日頃感じていました。そのような中、他の人にはなくて自分にあるものって何だろうと考えたときに、「過去のインド経験」がそれにあたると考えたのです。

インドが再び注目され始めた2007年頃、インド駐在経験者を何人か知っていましたが、かつての仲間に聞いた所、皆「2度と行きたくない」と。あっ、これはチャンスだ(笑)。この分野であればオンリーワンになれるぞ、と。

人事は60代になってもできるかもしれないけれど、インドを専門にして勝負していくには体力・知力的にも今でないとできないと思えました。それで、現職のゼンリンも含めると合計3社のインド駐在を経験、最初の勤務先では諸先輩から教えを乞いながら、あとの2社は立ち上げを0から行い、関わってきました。その取り組みを評価していただいて、「和僑」「インド進出請負人」などと呼んで下さる方々もいらっしゃいます。少し照れくさいですが(笑)。

一方、企業としての視点ではどうか。これがご質問に対する答えになるのですが、インド人は多くの人が地図を読めません。国民が「地図」「地理」のきちんとした教育を受けられていないためですね。地図は白地図の授業も小学校からある日本人にとって身近なもので、位置情報を無意識に駆使しています。でも、インドでは違う。最近はスマホの急速な普及で少し変わりつつありますが、元来、すべてテキストでどこに何があるのかを伝えていました。だから渋滞や迷いによる遅配や遅刻も当たり前のように置き又、それが理由としてまかり通っています。とても非効率です。

そのような状況の中に地図・位置情報サービスを入れていくことで、ビジネスが効率的にまわり、結果としてインドの経済成長にも貢献できるのではないかなと考えました。しかも生活の質向上にもつながる。また、当時はどこの会社もそのようなことをしていない。ポテンシャルがある市場だと考えインド最大の地図会社に出資を決めました。

ただ、使いこなす習慣のないものはなかなか使ってもらえません。それが難しい点です。「ニーズを創り出す」という視点で事業にあたる必要がありました。エリアマーケティングなどの使用した際のメリットの啓発を地道に繰り返していって、いかに「これはいい!」と思ってもらうか。その利点をわかってもらえれば、すぐに利用してもらえます。これをやりきった会社は本当に強いですね。インドにて「高付加価値ブランド」を確立できます。

インドで勝負する決意。(Bond-BBT MBA事務局より)第1回目の記事はいかがでしたでしょうか?

自身の専門性を高め、オンリーワンになっていくためにインドでビジネスを突き詰められることを決意された二宮さん。その決意は固く、これまで3社のインド支社立ち上げを押し進める原動力になってきました。「インド進出請負人」という異名をつけられるご活躍、本当にすごいものがありますね。

次回は、そのような経験をお持ちである二宮さんから見た、インドでビジネスをすることの魅力と大変さをお話いただきたいと思います。来週の記事もお楽しみに!

▼続きはこちら
【第2部】“はじめて”の体験を通して人に感動を与える喜び ~未開の地を開拓していく醍醐味とは?~
【第3部】現地の方々のためにならないビジネスは、決して長続きしない。

BOND-BBT MBA TOPへ

bond02