すべての生体はDNAで構成されていることが周知のこととなり、それぞれのDNAの役割も明らかになりつつある。人間という生体で構成される組織も、何らかのかたちでDNAの影響があるのではなかろうか。 これまでシリーズで解説してきた組織論の応用編の第1回として、生物学の理論から組織を考えてみる。老化、運動神経、病気、死など、DNAが生体に及ぼす影響を、そのまま組織に当てはめてみたらどうなるか。個の盛衰の仕組みは各組織の浮沈と見事にマッチする。
生物のDNAの約97%は無駄なもので、残る3%のDNAで日常の活動を成している。なぜ無駄だと思われる97%のDNAを捨てないのか。生物の進化を説いた「シャペロン保護説」は、生物は生存に不適切な突然変異を切り捨てず保持し、ある環境が整うと、これを発現させるという考えがある。これを企業組織に当てはめると、過去の成功や失敗などの多様な体験を蓄積してきた組織ほど、環境変化に対応できるという仮説が立てられる。また、サルと人間のDNA配列の違いは、わずか1.2%だと言われているように、その事業が成功するかしないかも、ほんのわずかの差が決定的な違いを生むだろう。 多くの生物は、生殖期を過ぎると急速に老化が進み、やがて死を迎える。これは1個体当たりの資源消費量を保持する意味からも経済的に合理性がある。細胞には、怪我などで細胞が壊れる「ネクローシス」、細胞の自死とも言える「アポトーシス」、寿命が尽きる「アポピオーシス」という3つの死のタイプがある。オタマジャクシの尻尾が成長とともになくなるのは「アポトーシス」現象であり、「アポトーシス」のおかげで幹細胞は常に新しさを保てる。 生物は適切な死をプログラムすることで、個および種全体の生を確実にしている。企業改革のプロセスでは、個人の組織からの退出をスムーズに実行できるよう、企業全体に関しても、種全体の進化のために生物学的な死をプログラム化すべきだ。 動物、特に人間の運動能力の向上は、筋肉の増強などの物理的能力だけでなく、観念運動(イマジネーション)が大切だという説が、運動心理学では重要視されるようになっている。組織において人材を活性化させるのも、反射的に正しく動けるイメージのできる環境をつくることが重要となる。暗黙知を暗黙知のまま伝えることにも注力すべきである。 動物の体の変化に最も大きな影響を与えるのが、「病は気から」と言われるようにストレスである。恐怖や不安感によるマネジメントは、決して持続的な動機付けにならない。
スライド 時間 タイトル 00: 00: 00 組織論応用編(1) 00: 01: 11 今日のテーマ 00: 05: 29 今日の流れ 00: 07: 11 企業のDNAを考える前に... 00: 11: 18 1.社会組織におけるDNAの議論 00: 18: 41 組織論への示唆1 00: 22: 35 2.“老化”現象とは?1 00: 30: 21 2.“老化”現象とは?2 00: 34: 20 組織論への示唆2 00: 40: 58 3.運動神経と社会組織 00: 45: 24 組織論への示唆3 00: 47: 46 4.「病は気から」の医学 00: 52: 29 組織論への示唆4 00: 58: 43 まとめ