講師:野田稔 1970年代初頭という、恐らく日本でも最も早い時期に生活提案型の日用品店を手掛けた、私の部屋。現在では3つのブランドで57店舗を手掛けるまでに成長した。 しかし、この成長はそれ自体が目的であった訳ではない。量や規模よりも質を重視し、顧客の声に応えてその期待を上回ろうとすること。つまり顧客により豊かな暮らしを提案することのできる自分達であり続けることこそが、この企業を営む上で最も重要なことなのだと前川社長は語る。
「私の部屋」は前川社長の父が1972年に雑誌「私の部屋」を創刊したことに始まる。元々フランス詩の研究を長くやっていた先代が、生活におしゃれさを取り入れる感覚を提案したくて立ち上げたものだった。まだまだ日本的な暮らしが主流であった時代だが、60年代に団地が多く造成されるなどして、リビング・ダイニングといった概念が根付き始めていた頃でもあった。雑誌は反響が大きく、特に雑誌に掲載された商品を買いたいという声が多く寄せられた。それを元に通信販売を行ったが、商品の仕入れなど問題で顧客の要望に応えきれずにいた。そこで先代がこれを店にしようと思い立ち、雑誌と同じコンセプトの生活用品店が立ち上がった。 会社の売上は1987年頃まではほぼ横ばいで安定しており、その後着実に成長している。ここで特徴的なのは、バブル期にあまり伸びず、バブル後に落ち込みがないことである。これは恐らく、生活提案というものを本当に理解する人の数と連動しているからだろう。バブル期に日本人は色々な経験ができたことで、我に帰ることができた。自分にとって大事なものを自覚し、それを愛することが豊かであるということだと理解するようになった人はバブル後にむしろ増えたのである。会社としては、そうした顧客に対してきちんと提案できる自分達であることに目標をおいてきたことがこの結果に繋がっている。 この真摯さは経営の隅々まで行き渡っている。例えば店頭にアルバイト店員を置かないこともその一つだ。顧客は生活者のプロであり、店員はそのプロとコミュニケーションできるプロでなければならないという考えが浸透している。また、その土地土地の顧客に即した提案をするためにもチェーンオペレーションを意図的に導入していないことも挙げられる。 ビジネスとはbusyに由来があるように忙しいもの。その一方で生活とは本来スローなものだと前川社長は語る。生活を豊かにすることと、会社を豊かにすることを両立し、busyすぎないビジネスを手掛けて「いい老舗」になることが大きな目標だ。
スライド 時間 タイトル 00: 00: 00 私の部屋リビング 00: 01: 32 会社概要 00: 02: 01 代表者経歴 00: 03: 10 沿革 00: 04: 15 ショップコンセプト 00: 16: 32 1972年1月 雑誌「私の部屋」刊行1 00: 19: 45 1972年1月 雑誌「私の部屋」刊行2 00: 28: 37 売上高の推移 00: 33: 58 基本理念 00: 36: 04 ポジショニング(マーケットにおける位置づけ) 00: 44: 16 店舗の特徴 00: 53: 27 経営方針 00: 56: 20 経営を成功に導くための3つのキーワード