ボストンコンサルティングが発見し、今日では経営学のどの教科書にも載るまでに普及した経営理論の一つである経験曲線とはどのようなものかを解説する。 この理論を簡単に言えば、工業製品の場合、累積生産量が多くなるに従ってコストが下がり、その下がり方の比率が一定である、というものである。この理論によって、成長することやシェアを多く取ることに戦略的な価値があることが解明され、当時の米国企業がなぜ日本企業から猛烈な追い上げを受けていたのかを明快に説明するきっかけとなった。
経験曲線のポイントは、曲線という名が付いているにも拘わらず、累積生産量を横軸に、コストを縦軸にとって、両対数でグラフを描くと傾きが一定の右肩下がりの直線になることである。つまり、累積生産量が何倍になると、コストが何%落ちるという比率が一定であるということだ。具体的な例で言えば、累積生産量が2倍になるとコストが20%落ちる製品の場合、ある段階から累積生産量が2倍になるとコストはその段階の80%であり、そのある段階から累積生産量が4倍になるとコストは同じく64%(80%の80%)になるということである。 また重要なのは、横軸がその時点での生産量ではなく累積生産量である点だ。これはすなわち、慌てて遅れを取り戻すのが困難であるということを示している。経験曲線と混同されやすいものにスケールカーブがある。これは、ある時点の企業の生産規模が大きいとそれだけコストが低減できる、規模の経済の効果を図示したものである。スケールカーブは横軸にその時点の生産量をとっている。この両者の違いは、スケールカーブがその瞬間の静的な関係性を捉えたものであるのに対して、経験曲線は長期に亘る動的な関係性を捉えたものである。 経験曲線の理論はボストンコンサルティングが日本企業の強さを分析して得たものであり、その意味では経験曲線の元祖は日本企業であることはあまり知られていない。この理論がアメリカで広まった後に、日本に逆輸入されてきたため、あたかもアメリカで開発された理論であるように捉えている人も少なくない。 また、基礎としての経験曲線の理論を様々な課題に応用的に適用できることも押さえておきたい。例えば製品の値決め(プライシング)である。経験曲線によってコストが下がることを予め理解できていれば、それを折り込んで戦略的に価格を下げ、そのことによってコスト優位を築く戦略をとることもできる。あるいは、独占的に新規参入した場合に製品価格を高めに据え置き、後発の競合が参入してきてからは経験曲線によるコスト低減効果にものを言わせて価格を大幅に下げるような戦略が有効に作用するであろうことも理解できる。
スライド 時間 タイトル 00: 00: 00 BCG戦略コンセプト#01 00: 03: 13 経験曲線 00: 10: 48 米国蒸気タービン発電機の例 00: 12: 27 半導体素子のエクスペリエンス・カーブ 00: 15: 11 ブロイラー 00: 25: 42 成長の価値 00: 26: 46 エクスペリエンスカーブとスケールカーブの違い 00: 38: 27 電卓のエクスペリエンスカーブ 00: 39: 34 プライス・アンブレラ 00: 43: 49 電卓のエクスペリエンスカーブ 00: 45: 50 価格戦略の2パターン 00: 49: 33 技術革新とエクスペリエンス効果 00: 51: 11 コンピュータ端末における技術革新 00: 52: 19 粗アルミのエクスペリエンスカーブ