マイクロソフトの3代目社長、サティア・ナデラ氏は、著書『Hit Refresh』で「成長する気持ちを持とう」と書いている。変革のキーワードはGrowth Mindset、失敗が許されない文化だったものを、失敗から学んでレベルアップし、次へ展開しようという考え方だ。存在意義は、自社のサービスを通じて地球がきれいになること。現在は次の段階、Benefit Mindsetを議論しており、より先進的な企業へとまい進する。
ソニーは前社長、平井一夫氏の著書『ソニー再生』で見て取れるように、どん底時代から株価約3倍へと復活した。パーパス経営の代表と言われる当社は、2018年に代わった吉田憲一郎氏がパーパスを「感動」という言葉に転換し、ミッション「CreativityとTechnologyの力で世界を感動で満たす」を掲げた。人材とTechnologyを使った6個の事業を絡み合わせてソニー的価値観を復活させ、CreativityとTechnologyを両立している世界で唯一の会社として存在する。
一方、トヨタは経営的な危機がなかったが、成長のために「意志のある踊り場」をつくった。2020年、豊田章男氏は「私たちは幸せを量産するというパーパスを持つ」と発表。赤いハートに「Waku-doki」のメッセージをしるし、「12Dreams@Toyota」という理想の未来を具体的な言葉と写真で表した。
味の素は2015年就任の西井孝明氏があらためてパーパスを掲げ、ASV(Ajinomoto Group Shared Value)経営へと変革する。ASVの本質は「食と健康の課題解決企業」、パーパスを高く持つことで10倍効果が出るとし、実現のためにDXを段階的に使用した。重要なのはASVを自分ごと化すること。「働きがい」やDXの「X(Transformation)」にも目を向け、顧客・人材・組織の見えない資産を見える化、未来に向けて企業価値を高めていった。
変革で大事なのはパーパスを見極めた上で、成長を阻む企業病の発見と対処をすること。理想と現実の壁をどう埋めるかが鍵となる。変革の例として、稲盛和夫氏と永守重信氏の手法を描いた『稲盛と永守』も参考になる。