従来、事業ポートフォリオで目指す領域は収益性と市場の伸びだったが、先行き不透明な現代では通用しない。実践的なのは、マトリクス上で短期・中期・長期の時間軸とリスクを掛け合わせ、短期から長期へリスクも取りながら狙いを張っていくモデル3のPOIだ。
IBMは低リスク・短期のゾーンでハードをShrink、中リスク・中期ゾーンでGlowに当たるソフト会社を買収し、成功へ導いた。富士フィルムは、本来は成熟産業で捨てるゾーンにいる化粧品を、新規の機能性化粧品として成長ゾーンに置き、衰退していくアナログは、写真フィルム、マグネチックテープ等を残しながらデジタルへ進出。将来への中継ぎのキャッシュ獲得に富士ゼロックスのコピー機を買い、投資へつないだ。現在は再びテープやチェキカエラが大ヒットしており、集中と選択が功を奏した例として注目される。
モデル4「Möbius Cycle」は、イノベーションにおいて商品・サービスを軸に顧客視点・自社オペレーションへ注力するも、時間軸の進化を見ない点を改善。持続的イノベーションとしてマトリックス上の顧客現場・事業現場・顧客洞察・組織DNAという四隅と、真ん中の成長エンジンを重要域とする。このとき成長エンジンを通りながら四隅を回すことをメビウス運動と呼び、代表的なのがAppleの事例だ。
左下の組織DNAゾーンでAppleらしさを取り戻し、iPod、iPad等を進化させ、事業現場でトータルコントロールする仕組みに変えた。同様に企業DNAを復活させたのがスターバックス。事業現場では個々のスタバの特性を生かし、似ているコミュニテイーに横展開させるクリエーティブ・ルーティンを行った。また、顧客の視点が見えるフロントミドル、オペレーションが分かるバックミドル、リーダー的存在コアミドルの3人の動きが重要であり、トヨタはミドル3人を約10のテーマに配置し、1年で完結・解散の取り組みを30年行っていることで変換を続けている。次回は、守と破を頭に入れながら離で未来にどう適応するかを講義する。