2010年前後はまだエッジの概念がなく、Cisco内で立ち上げたベンチャーはIndustrial Internet of Thingsを意識したPLCコントローラー中心だった。その後Industry4.0ができ、オンライン化への進展でクラウドが現れたが、工場やロボットから大量の情報が流れるようになり、現場ではクラウドとセンサーの間にもう一階層のフォグが求められた。
2015年、エッジの前身であるフォグコンピューティングを概念にFogHorn が設立され、即効でデータ処理をするソフトを開発、立ち上げ1年はOEM案件が中心で現場への浸透は少なかったが、2017年ごろから、ソフトをインストールして現場でデータ収集・可視化を行い、業務に生かす企業が増えた。成功例を挙げると、中国電力・エネコムは水力発電システムの効率化、故障の検知、環境のリアルタイム監視のために導入、IoTデータを可視化し、数値の変動をチェックして業務改善につなげている。大阪の変圧器メーカーのダイヘンは、全体オペレーションを可視化して工数削減と問題の早期発見に結びついた。
2020年にはエッジコンピューティングが本格化し、さらに現在はエッジAIが注目されている。AIは良質なデータを投入するといい答えが返ってくるものであり、同時に価値(利益)あるデータとして保存できる。今、世界はコロナ禍に陥っているが、コロナ以前にDXへ投資をしていた企業とそうではない企業とは、大変な企業間格差が生まれている。
今後の展望は、エッジAIを動かすハードウエアがコモディティ化し、小さなチップだけで動かせるようになる。さらに5Gと組み合わせるとエッジAIの展開が広がり、クラウドとエッジとの境界線も曖昧になって連携がスムーズになる。現状は点の情報であるセンサーが中心だが、奥行きも取れるVision(画像)データに大半が置き換わっていく。エッジの処理は安価に行えるようになってきたので、今後はAI全般を通して導入するかが大きな差を生むことになり、画像データをどのように使っていくかもポイントになる。