日本では再生可能エネルギーとして主に太陽光・風力・水力が注目されているが、火山大国である日本の地熱発電は世界第3位という高い能力を持つ。地熱発電は、季節・天候・昼夜を問わず一定量の電力を安定的に低コストで供給できるベースロード電源で、燃料が要らず、設備は長寿命、温室効果ガス排出量が少ないクリーンエネルギーで、地域に雇用も生み出す。地下1千メートル付近から取り出した蒸気で直接タービンを回して発電するフラッシュ発電と、地下から取り出して使い終わった100℃前後の熱湯を蒸発させて発電するバイナリー発電を組み合わせて有効に循環する。
日本の地熱発電所は現在約60カ所、50万キロワット稼働中だ。温泉地域住民との利害関係の調整、適地の多くが国立・国定公園内にあること、事業推進の仕組みづくりが課題だ。海外で地熱発電用タービンの納入は日本メーカーが67%を占める。太陽光や風力では中国製が席巻しており、日本で地熱を産業として育てる意義は大きい。地熱資源量が大きい米国やインドネシアは火山規模も巨大でビジネスモデルが日本には通用しない。
日本と同程度の島国で火山の特徴も似ているニュージーランドで、先住民族との共生を目指した「資源管理法」を起点に地熱発電実績を約8倍に上昇させたことが参考になる。
日本で地熱発電の目標「2030年までに3倍の150万キロワット」を達成するには地元との共生が必須だ。ふるさと熱電では、地域住民30名が出資する「合同会社わいた会」から施設建設・管理運営・資金調達・許認可取得支援等の業務委託を受ける形式とすることで、対立構造にあった温泉地域と地熱発電における収益性と地域への貢献余地を残している。今後は、地域の古き良き資源の発掘や発信、就業ワーケーションなど未来につながる事業創出、地元が事業への主体性を持つことで信頼と権益を確約できる契約を推進、地下構造を見える化した上で影響や使い方の検討、小規模で効率的な地熱発電パッケージ構築による収益化等で、地域が活性化する事業を広げていく。