昨今の企業活動は、環境・社会・ガバナンスのESGだけでは横並びだ。17のテーマを掲げるSDGsは、成長ドライバーとなり得るが、愚直に取り組んでいては利潤が薄いため、CSV(社会的価値と経済的価値の同時実現)への発想の転換が不可欠だ。エシカル消費動向に伴い売り上げが上昇。自社の志に納得した社員の生産性アップでコストが軽減。倫理観念が浸透しコンプライアンスリスクが低減。ブランド、ナレッジ、人財等の無形財産が増加。4つの好循環が利益をもたらし、社会的価値を高めることで企業価値が上がる。
2050年に向けたキーワードは「新SDGs」だ。SDGsの17枚のカードは与えられたもの。「Sustainability」は、18枚目のカードをどのようにつくるかが問われる。「Digital」はDXへの変革。「Globals」は市場の動きを外に広げて複数でつなぎ直すこと。3つの輪の重なりに、どのような地球を後世に残したいかの想いである「志」を共通基盤として置く。コロナ禍で、志から出発したS・D・Gsへの変換は加速しているようだ。
サバイバルに焦点を当てるサステナブル経営と、個々人のやりがいを重視するパーパス経営は、似て非なるもの。後者は、CSVが駆動する仕組みをいかに組織内に埋め込むかが鍵を握る。左手に従来のピラミッド型組織、右手に創造的なアメーバー型組織、両者が幾つもの接点で行き来する、ハーバード大学教授のJ・コッターが提唱する「両利きの経営」が最適解となる。短期と長期を見据えた遠近複眼アプローチも欠かせない。パーパス経営の実践は、理想先行のきれいごとではない。自社の課題を内省し、従業員一人一人が腹落ちして自分ごと化できるかどうかが最大のポイントとなる。多少時間はかかるが、的確に投資をすれば、それぞれの企業ごとに必ず実現できる。今回のテーマは、講師である名和氏の近著『CSV経営戦略』『パーパス経営』に詳しい。