最初に、当思考法の印象として「気休め」と感じるかもしれないが、問題解決のためにもまず気を休めることが重要であり、究極の気休め手法と捉えるとよい。そもそも人は同じ状況でも考え方(解釈)によって感情と行動が変わるので(ABC理論)、行動変容の際、考え方を変えるのは効果的だ。
「ねばならぬ」に関して、なぜ駄目なのかという根本的な質問があった。存在しない結果の保証を要求する非現実的で根源的な矛盾を招く思考であり、失敗の恐怖に根差した外的動機付けが「ねばならぬ」に他ならない。逆に強い願望思考の「ありたい」には根源的な矛盾がなく、たとえ願望がかなわなくても悪いマイナス感情を覚えずにすむ場合が多い。
「ありたい」思考になると動機付けが弱くなるのではという疑問だが、危険回避要求の「ねばならぬ」に負けないよう意識的に強く願望し、願望未達成にまつわる良いマイナス感情と共に行動の原動力にするとよい(第5ステップ)。また、納得感のある思考技術を反復練習し、自分の中の「ありたい」を整理することも重要だ。
第3ステップの願望未達成の「受容」は諦めではないかという質問に対して、受容とは認知することであり、決して同意や軽視することではない。存在の認知は問題解決のスタートラインと考える。
第4ステップの願望未達の解説で、もっとポジティブの方がよいのではという質問だが、リスクを許容しない限りポジティブに持っていくのは困難だ。まずは最悪状況に耐えられる感覚をつくり、その上で自然とポジティブになるのは悪くない。
タフネス思考法はセルフ・コーチングであり、安易に他者へコーチングすることは危険だ。また、ゆったりと業務をこなす上でのイメージ上の誤解を招く可能性も踏まえる必要がある。習得のコツは、心配(準備)、不愉快(交渉)等の良いマイナス感情と、不安(逃避)等の悪いマイナス感情の違いを理解し、何度も襲ってくる「ねばならぬ」に留意しながら5ステップの練習を習慣化すること。次回は応用力をつけるための総合演習を行う。