アジャイル組織とは、環境に適合して自分自身もアウトプットも変化する、明確な組織構造がない集合体のようなもので、授権されたネットワークにおいてリーダーは共有的・支援的であること。デジタル時代は要となる組織であり、現在サイボウズは、アジャイル組織へ変更を進めている。
自社製品であるグループウエア等を使い、まずは人事制度改革から、「100人いれば100通りの人事制度があってよい」という考えの下、制度・ツール・風土を土台に、働き方の多様化を現在進行形で続けていると、水戸氏は説明する。
組織変更の背景は、事業がパッケージ販売からクラウドサービスに変わってきたので、短期間で動くアジャイル開発と運用が求められることと、組織規模拡大と業務のリモート化だ。目的はユーザー価値の最大化であり、オープン性と大まかな計画を基本に、チームで全体最適化を目指している。具体的な組織は場所や職能間を取り払ってつくられ、多様なスキル・個性を生かし、意思決定もメンバー間で行うプロダクトチーム、部長の役割が再配置され、旧部長陣で構成される組織運営チーム、各分野の専門家が集まるエキスパートチームと、自立・公明正大等の企業文化を守りながら、約160名、30チームで構成されている。
改革で見えたチームの変化は、職能間の透明性が増しお互いの信頼関係が強まったことで、問題が全体的に見えやすくなった。リーダーの存在もそれぞれの意思決定に任せ、状況の変化に対応している。メンバーの変化は、従来行っていた部長との相談が幅広い人との1on1に変わり、新規ユニットへの体験入部も活発になった。組織の変化は、全体をまとめるマネジャーがチーム化されたことだ。組織変更で気付いた点は、変化はゆっくり起こり、最初の成功例で普及が進むと水戸氏は話す。サイボウズの改革は大胆に見えるが、戦略的道しるべがあり、下支えする企業文化が存在する状況で自由に動けるのであろう。今後活発になるであろうDXとアジャイル組織について、本実例を参考に組織改革に取り組むべきである。