日本海を挟んで中国大陸の隣にあるわが国は、小さな島国と捉えられがちだが、実際のところ、地図上でヨーロッパに重ねてみるとデンマークからスペイン辺りまでをカバーする。現在典型的なシーパワー国家として位置付けられるが、過去にはランドパワーが君臨した時代もたびたびあった。当シリーズ最終回は日本を取り上げる。やや趣向を変えて、古代縄文から現代に至る本邦の歴史を、シーパワーVSランドパワーとして地政学的見地から解説していく。
狩猟と畑作が中心とされる縄文時代にも、船を用いた遠隔地交易が行われていた事実が見つかっている。弥生時代は、稲作の普及とともにランドパワー的な律令国家制度が導入された。平安時代、平清盛が日宋貿易で台頭。鎌倉は、騎馬戦に強い関東武士団が席巻。室町は、明との勘合貿易で貨幣経済が開花。戦国時代は楽市楽座や南蛮貿易が隆盛。江戸に入り、石高制による封建制度を取る一方で、大阪のコメ市場など経済は資本主義化した。 1853年のペリー来航により開国。イギリスの後押しで薩長同盟が成立し、明治政府が創立。親英米派(シーパワー)の海軍は、日英同盟の締結でロシアに対抗し、日ロ戦争に勝利。反英米派(ランドパワー)の陸軍は、朝鮮や満州の利権拡大を志向。満州事変の成功で陸軍が実権を握り、日本全体を統制経済化。太平洋戦争開戦、1945年に敗戦を迎えた。 戦後、親英米派の吉田茂が日米安保を結び自由党結成。反対派はソ連と手を組み日本社会党を立党し、安保反対闘争を展開。自由党の池田内閣は高度経済成長で運動を沈静化。1972年、ニクソン訪中。親米派の田中角栄が宗旨変えして日中国交、対中投資で最大派閥を形成。東西冷戦終結で自民党分裂。2009年に民主党が政権獲得するも、沖縄基地問題で対米関係悪化、中国への迎合、長期デフレ等で支持率下落。2012年、第2次安倍内閣が発足し対米関係修復、中国包囲網構想に注力。対アジア政策は安倍総理頼りの米トランプ大統領が、「米中戦争」を発動。後任の菅首相は従来路線の継承を表明している。 地政学は、地理的要因から世界を俯瞰的に考察する未来予測ツールだ。どこの国も、程度の差はあれシーパワーとランドパワーのせめぎ合いを内包し、時の政権の組み合わせ次第で外交バランスは変化する。ITの発達による情報過多で、かえって混乱しやすい現代だが、少し引いて眺めると、世の中の流れは意外にシンプルなことに気付くだろう。
スライド 時間 タイトル 00: 00: 00 地政学入門#12 日本 00: 00: 48 資料 00: 03: 54 日本列島のシーパワーvsランドパワー 00: 14: 15 地政学からみた源平の内乱 00: 24: 08 地政学からみた室町時代 00: 28: 33 地政学からみた戦国時代 00: 33: 51 地政学からみた江戸時代 00: 42: 43 地政学からみた明治維新 00: 42: 46 【再掲】地政学からみた江戸時代 00: 43: 42 【再掲】地政学からみた明治維新 00: 46: 37 地政学からみた大日本帝国 00: 52: 42 地政学からみた戦後日本 00: 58: 21 地政学からみた現代の日本 01: 02: 02 第12回 日本 まとめ