ユダヤ民族は、19世紀末のロシアにおけるユダヤ人大量虐殺をきっかけに欧州へ流出したが、フランスのドレフェス事件、アメリカの「移民法」制定、ドイツのホロコーストと理不尽な迫害を受け、パレスチナへ大量流入した。第2次世界大戦後の1948年、融資を受けたロスチャイルド家への見返りにイギリスが出したバルフォア宣言を受け、シオニズム(ユダヤ建国運動)悲願のイスラエルを建国した。
一方、1947年に国連裁定によるパレスチナ分割案で国から排除されたアラブ人は、ソ連の支援で社会主義集団のPLO(パレスチナ解放機構)を結成しゲリラ戦を開始。事態はパレスチナ紛争、中東戦争へ発展するも、ソ連崩壊で窮地に陥り、1993年に米クリントン政権が仲介したオスロ協定で和解。PLOはヨルダン川西岸やガザ地区でパレスチナ人の自治を獲得したが、火は鎮まらず、同地区のユダヤ人入植者がラビン首相を暗殺。イスラム原理主義のハマスらは、イスラエル側の排斥を掲げ、イラン革命防衛隊の軍事援助で武装闘争に突入。イランの核開発は脅威となるが、右派連合出身の首相ネタニヤフは、西岸からの撤退を拒否している。報復合戦はいまだ終わりが見えない。
ニューヨークを中心にユダヤ移民を票田とするアメリカ民主党は、一貫した支持をイスラエルに寄せ中東和平に尽力してきたが、イスラム教に縁あるオバマ大統領が宿敵イランと和解を図ったことで関係悪化。後任の共和党トランプは、娘のイバンカファミリーもユダヤ教徒、エルサレムでのアピールなど修復に奔走する。他方、イランの横暴を警戒するサウジアラビアをはじめとしたアラブ諸国は、イランをたたくトランプを歓迎している。敵の敵はわが味方なり、まさに地政学のセオリーだ。少数民族ユダヤ人が世界最強国家の米国を手玉に取った格好のイスラエルだが、未来はお世辞にも明るいとは言い難い。