ロシア革命後、バルト3国らと同じくウクライナも独立するが、内紛続きでじきにソ連に再併合され、スターリンの意図的な大飢饉誘発で、同民族のロシアに対する憎しみは増幅された。ウクライナを出自とする後釜のフルシチョフは、宥和政策に転じてクリミアをウクライナ領と制定。1991年、ソ連崩壊によりウクライナ共和国が成立。悲願の地中海ルートを死守したいロシアは、セバストポリ軍港を租借する懐柔策に打って出た。
アメリカでは、クリントン、オバマと続く民主党政権が、国際金融資本を後ろ盾にジョージアやウクライナの民主化運動を支援し、自国が主導するNATOへの加盟を画策。新興財閥が肩入れする西部の親西欧派と、旧共産党系が後押しする東部の親ロ派とでウクライナの政局が対立する中、ロシア系が大多数を占めるクリミア半島で、2014年に親ロ派与党に対する親西欧派の抗議が暴動化。政権交代した親西欧派トップはロシアへ撤退要求。議会は住民投票を実施し、圧倒的多数でウクライナからの独立とロシア編入を決議。プーチン大統領がかたちばかりに受諾してクリミアを奪取したことで、非合法なやり方を非難する欧米は一斉反発し経済制裁を発動。世に言う「クリミア危機」でロシアは国際的に孤立し、いまに至っている。
現在、米ロ代理戦争の場となったウクライナは、大統領が俳優出身で現実派のゼレンスキー。ロシアは就任20年目のプーチン。他方アメリカは、ヒラリー・クリントン追い落としのロシアゲートが取り沙汰された共和党のトランプ。再選を狙う今年の大統領選挙の対抗馬は、奇しくもオバマ政権当時副大統領だったジョー・バイデン。こちらもウクライナでの利益相反疑惑を抱える。選挙の行方次第では、米ロ関係は再び泥沼化しかねない。アメリカ頼りの日本だが、対ロシア政策の後退は避けたいところだ。