面積の割に人口約1・4億人のロシアは、平均寿命が65歳、GDPは韓国を下回る1・6兆ドル。主たる産業もなく原油・ガスの輸出に依存する経済は、中東情勢や米原油価格に絡む変動で甚大な影響をこうむる。もとは独仏を足した規模ほどにすぎないキエフ公国。13世紀に君臨するモンゴル帝国に制圧され、以後200年余り服属するも、騎馬軍団を組織し、婚姻を結んで後継者を名乗り、広大な同帝国に取って代わってロシア帝国を建国。17世紀に満州へ東進し清軍に敗北するが、19世紀、アヘン戦争期の混乱に乗じてウスリー江沿いの沿海州を合併。1920年代に共産党が天下を取ってソ連邦を立国。冷戦期、ソ連は核保有の強みで中国を威圧し、自国の優位を見せつけた。遅れて核を持った中国はアメリカに接近。日米資本が入った同国は上昇し、孤立したソ連は連邦崩壊へと後退していった。
2001年、経済成長著しい中国は、ロシアなど旧ソ連邦5カ国と新たなランドパワー同盟となる上海条約機構を締結し明確に主導権を握った。2007年以降はインドとパキスタンが加入、オブザーバー参加のイランも交え、合同演習による軍事同盟化で米国へのけん制を図っている。対米政策で手を握ったかに見えるロ中だが、1億人を擁する満州地域から人口減少が続く極東への大量移民不法流入問題は、北極海活用を見込んで既成事実化を狙う中国と、防衛にこれ努めるロシアとの間で、もはや両国関係瓦解への時限爆弾と化している。
わが国の世論は、ロシアに対し北方領土返還問題やシベリア抑留等で、ネガティブな印象が多勢だ。安倍首相がロシアに歩み寄りを見せると、ウクライナ問題で強硬姿勢を取る米国が機嫌を損ね、事態は一向に先へ進まない。単独で捉えればうまく行く話も、引いて大きな絵で眺めると周辺諸国の思惑がもつれ合うのが外交の常。とはいえ、仲が冷え込んでいる間に誰が漁夫の利を得るのか、冷静になって考える必要があるだろう。