1823年のモンロー宣言以降、東沿岸の独立13州から西部へ無尽に拡大したランドパワーの米国。南北戦争後の全域工業化と、対スペイン戦争によるキューバ、パナマ運河を経由した太平洋海上ルートの獲得で、シーパワー国家に変貌した。片や独立自尊の開拓精神が源流の保守共和党、片やニューヨークの国際金融資本が支援する移民が支持母体となるリベラル民主党、政治の二大潮流が形成されると、時の与党は揺り戻しのごとく交代が繰り返されてきた。対中国投資と同国の軍事台頭に妥協点が見いだせない中、ランドパワー牙城の共和党所属のトランプ大統領は、米中冷戦へかじを切った。
秦の始皇帝以来2千年、強権と官僚機構で人民支配が続いたランドパワーの中国。南部の港湾都市にシーパワーを抱えていたが、1894年の日清戦争後、列強による分割で外資が流入して上海が急発展。浙江財閥が援助した辛亥革命で中華民国が成立、全土シーパワー化した。ロシア革命に影響を受け結成された毛沢東の共産党は、蒋介石の国民党を台湾に追いやり、第2次世界大戦後に先祖返りのランドパワー中華人民共和国を建国。文化大革命を経て、1980年代に国民党生き残りの鄧小平が改革開放政策を掲げ、再びシーパワー化。対米関係改善を打ち出すも、水面下でしたたかに自国海域の長期拡張プランを画策。市場経済と一党独裁の矛盾を抱える中、ソ連崩壊で北の脅威が消滅すると、胡錦濤時代の東シナ海ガス田開発、習近平の南シナ海環礁埋め立てによる軍事要塞化等々、天安門事件後は中国のランドパワー傾斜が加速している。
1990年代後半のクリントンと江沢民のように、同時期ともにシーパワー政権なら蜜月だが、ランドパワー同士になると一転犬猿の仲となる両国。間に位置するわが国にとっては、対立にかまけてくれればありがたいのが実情だ。