茂木氏は、駿台予備学校およびネット配信のN予備校で世界史を担当。iPadを駆使した独自の視覚的授業が好評を博している。傍ら、歴史系YouTuberとして「もぎせか」チャンネルで時事問題を発信。受験参考書の他、『経済は世界史から学べ!』等多数の著書がある。
世の中、おしなべて理想と現実がある。国交には友好が第一、観光客はもとより貿易の相互依存度が高い国々から人の往来を妨げてはならない。一方で、世界中で感染症が爆発的に広がっている現在、大多数がシャトアウトにかじを切っている。戦争はどうか。文明の進歩により戦争を克服できる。平和は万国共通の願い、防備は不要だと訴える。他方、国家は生存のためには戦争も辞さない。平和を守るには軍備を整えよと警鐘を鳴らす。地理学(Geography)+政治学(Politics)=地政学(Geopolitics)。引っ越せない場所で、選べない隣人に囲まれ、いかに生き抜くかに腐心せざるを得ない現実において、地政学は圧倒的なリアリズムに基づく国際関係論の考え方となる。
地理的環境から国家は二つの方向性に大別できる。広大な領土・領民を掌握するために独裁で官僚的となって共産主義化した、大陸国家(ランドパワー)。後者は、自由勝手な海上交易から経済成長が生まれ資本主義化した、海洋国家(シーパワー)だ。ランドパワーとシーパワーのせめぎ合いの中、フランスとソ連に挟まれ危機感の強いドイツで地政学の潮流が生まれた。19世紀末、ラッツエルが国家有機体説を唱え、チューレンは自給自足体制の確立を説いて、地政学の概念を規定。続くハウスホーファーは統合地域論を提唱。英国の独占支配に抵抗し、独・米・ソ・日による世界4分割をもくろんだことで、人類は第2次大戦へ突入していく。次回以降、国と国との関わりが興味深い世界史を、教科書で学んだこととはやや異なる、茂木式地政学的見地から解説していく。