インドにおけるIT産業の成長率を見ると、2017年は2000年の約20倍となっており、リーマンショック、AI革命等、世情の激動も乗り越え発展を続けている。産業構造は主にITサービス系、業務系アウトソーシング、ソフトウエアプロダクトの3種類、各国との関係は米国が圧倒的で、次いで英国、欧州と、いずれも年々規模は拡大しているが、日本はいまだ1%以下と、インドを全く活用できていない状態だ。現在、GAFAをはじめ、グローバル企業1050社がバンガロールに拠点を設けており、設計や企業のコアな開発が行われている。業種も半導体や自動車、産業機器関係等の技術系の他、金融や小売業等、ほぼ全てを網羅し、新しいタイプのオフショアとして、先進国の足りない技術を補うかたちでインドを使っている。
背景にあるのはスタートアップの急増だ。大学のインキュベーションセンターやベンチャーキャピタルと、人材も資金も豊富に集まっており、さらに政府の後押しを受けて起業家がどんどん増え、企業は存分に活用できる環境下にある。
インドの環境は宗教・言語等が多種多様であり、国民はカオスの状態で育つと言っても過言ではない。そのため、周りを調和させる能力が育ち、優秀人材の多くが活躍の場を世界へ広げている。
特に米国との関係は強く、例えばマイクロソフトやアドビのトップ、ハーバード等大学の学長や学部長と、グローバル人材輩出国としても名高い。インド人は多様性に加え、独自の「ジュガード精神」、諦めない心を持って、数々のイノベーションを起こしている。代表的なものに、インド版マイナンバーの「アーダール」、オープンAPIの「インディア・スタック」、モバイルウォレット等がある。
新興国でありながらIT先進国という過去の事例にないインドは、日本の将来にとって重要な位置付けになると認識しなければならない。日本人はまず現地の古き印象を捨て、積極的に視察へ赴き、空気を体感することが重要だ。詳しくは武鑓氏の著書『インド・シフト』を参照にされたい。