小林氏は、それまで培ってきたソフトウエア技術、プロダクトマネジメント・プロジェクトマネジメント・ベンチャー系の人脈・資金調達方法等を生かしてITが使われていない分野に進出したいと考えていた。実家が農家だったことで問題意識は潜在的に持っており、海外視察中に小規模でも手間を掛けた高付加価値生産物がスマホを通じて消費者へ提供されていることに目を付けた。農産物・海産物・加工品の予約注文サービス「OWNERS」を展開していた谷川佳氏と共に株式会社ukkaを2017年に設立。「OWNERS」は、生産者がつくる希少食材に生産段階から一口オーナーとして登録した消費者と栽培期間中のコミュニケーションで顔が見える関係をつくり、最もおいしいタイミングで直接届ける仕組みを構築している。
生産者が価格決定権を持てるためキャッシュフローは改善、計画生産で無駄も削減され、ファンができることでモチベーションが上がる。消費者は本物志向の男性が過半数を占める。平林氏は、2013年オーガニック野菜をメイン商材としたスムージー用青果宅配専門店として「VEGIO VEGICO」ブランドを立ち上げ、レシピや手作りキットの提案、ファッション誌への掲載、Instagram活用等で食に興味を持つ人を増やし、売上は1年も経ず10倍以上に成長、黒字化を達成した。
2017年にフードデリバリーサービス「VEGERY」を始め、宮崎中心の農家から集荷した生産物を、東京では渋谷など4拠点から1時間以内に届けられる地域に即日、それ以外は最短で翌日配送。仕入れから配送までワンストップで行い、根津に実店舗も構える。2018年に設立した農業法人VEGERY FARMでは、雇った新規農家に給料を払い、後継を求める既存農家がノウハウを教えて、収穫した野菜をアプリで販売、農業従事者の高齢化と農業人口減少の解決を図る。古くからある農業だからこそ、手が付けられていない問題点や課題もある。裾野が広がるような新しい仕掛けや視点を掘り出し、地域や農業を盛り上げていく可能性は小さくないと言えそうだ。