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人生を豊かにする教養 ~中国の古典を読む~ > 人生を豊かにする教養 ~中国の古典を読む~ 06

策略の書~智嚢~


概要:
「中国の古典を読む」最終回は、策略の書『智嚢』を取り上げる。他の策略書として『孫子の兵法』も有名だが、論理的に簡略化して書かれており、もっと奥深く、背景まで含んだ内容を理解してほしいという意図で、『智嚢』の方に注目した。テーマの「策略」というと悪いイメージを持つかもしれないが、必ずしも悪略だけでなく、心温まる話やとんち、時にはどんでん返しもある。本書は毛沢東や習近平も愛読しているといい、過去の出来事の記述だけに終わらず、現代の中国でも有益なアドバイス書と理解されている。
『智嚢』は明の時代、馮夢竜(ふう・むりゅう)がちまたで聞いた逸話や歴史書をまとめたノンフィクションであり、全28巻のタイトルを付けられたものが、上智、明智、閨智等、知恵の種類によって10個のカテゴリーに分類されている。特徴的なのが、例えば「閨智」は女性の知恵という意味を持ち、馮夢竜は男社会だけではなく人間全体の知恵を取り上げていることだ。想像を超える策略や発想もあり、日本人が読んでも十分楽しめるが、日本国内では増井経夫氏の『智嚢-中国人の知恵』のみ発売されおり、約40冊もある中国書と比べると、両国の捉え方の違いがあらためて示されているようだ。

本書の内容を詳しく見ると、「明智・知微」と「経務」は、中国大乱時に起こる大飢饉を乗り切るための知恵が書かれている。事前に飢饉を予測し、穀物を団子にしてストックしておいたり、大飢饉発生時、米価高騰を避けるため役所が米商人から高く買い取ることで米の出し惜しみを防いだりと、生きるためのシミュレーションを重ねていることが分かる。「察智・得情」には中国人の考え方が明確に表れている。自分の仇を陥れるために、実母を殺して仇の家の前に放置するも、殺人疑いは晴らされた話。漢字の読み替えを利用し、財産を娘婿ではなく妾の子へ残した話等、血統の正しい考えや生活の在り方が記されている。『日本人が知らないアジア人の本質』の「台湾の作餉」にも詳しく解説しているので、参照されたい。

『智嚢』のような中国人の「策略」「奸計」は、人間の心理をうまく利用した聡明な人の行いであり、心理作戦でもあると、『新・中国人と日本人-ホンネの対話』において林思雲氏と金谷譲氏が述べている。老子の言葉「不善人は善人の資なり」のごとく悪人も活用次第、毒も薬になるというのが中国人の基本的な考え方であろう。最後に、当番組では奥深く実践的な中国の姿を知っていただくために、より本質に迫った書物を紹介してきた。今後も中国古典に親しみ、漢文の読み方にとらわれず自由にチャレンジしてほしい。

 講義タイムテーブル:
スライド 時間 タイトル
00: 00: 00 策略の書~智嚢~
00: 01: 29 目次
00: 02: 16 中国の策略の書 戦国策の評価
00: 06: 00 智嚢の作者・馮夢龍(ふう・むりゅう) 日本での出版
00: 08: 54 智嚢の中国書 毛沢東も熟読
00: 10: 59 各巻のタイトル
00: 13: 30 泥棒退治 大乱の食糧難を切り抜ける
00: 17: 40 飢饉に米価を引き下げる ニセ札を正札として流通させる
00: 22: 07 辺境住民の射撃上達法 不実の嫌疑を暴く
00: 28: 18 文の読み替えで故人の遺志を読み解く 日中の血統に対する考え方の差
00: 33: 00 靴の盗人を暴き出す 強敵の首領を凍死させる
00: 37: 44 部下から多額の献金を巻き上げる 大臣の放蕩息子を褒める
00: 43: 52 仔馬の育成法 敵の雄馬をかすめ取る
00: 46: 31 酒造りの道具だけで死刑? 底なし船で敵兵を殲滅
00: 51: 34 策略、奸計は悪いのか? 中国人の思考様式
00: 56: 34 悪人は排除すべきか? 「NO!」が中国人の考え
講師紹介: 麻生川 静男(あそがわ しずお)
リベラルアーツ研究家

1980年京都大学大学院工学研究科卒業後、住友重機械工業株式会社に入社。
システムエンジニアーを経て、データマイニング事業を遂行。ミュンヘン工科大学、カーネギメロン大学工学研究科に留学。徳島大学大学院工学研究科にて博士(工学)取得。複数のITベンチャーの顧問歴任後、2008年京都大学産官学連携本部のIMS寄付研究部門・准教授。2010年「リベラルアーツ教育によるグローバルリーダー育成フォーラム」を設立し、運営する。

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  アシスタント:倉見 慶子

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