小川氏は1979年慶應義塾大学卒業後、グローバル業務に就くことを目指し株式会社トーメン(現豊田通商株式会社)入社。コロンビア大学経営大学院修士課程修了後の1987年、ゴールドマンサックス・アンド・カンパニー入社、シンジケートマネジャー等を歴任。1994年、華僑10大財閥の一つ、ファー・イースト・コンソーシアム・インターナショナル・リミテッド代表に就く。1997年、大黒屋ホールディングス代表取締役社長に、2013年には大黒屋代表取締役社長に就任。著書は『日本企業が世界で戦うために必要なこと』など。
大黒屋は戦後の混乱期に千葉県船橋市で質屋業として創業、2004年には外国人向け免税販売を開始し、現在は首都圏地区と関西、福岡市で総合買取・販売業を展開する。40歳代以上の中高齢層が私蔵するブランド品の買い取りが多いが、中国人を中心とした免税販売額の伸長も顕著だ。大黒屋が担う日本発のブランド品販売は外国人からも信頼が厚く、日本人自身がブランドになっているとも言える。それを支えるのは、各店にそろう、一人でブランド品からジュエリーまで鑑定できる経験豊かな人材だ。それ故、常に流動する市場にマッチした値付けも可能になる。
同時に、正規ブランド100%保証のリスクを負えるほどの真贋判定力も他社の追随を許さない。高い総合鑑定力に裏付けられ、商品在庫回転率と売上総利益を掛け合わせた交差比率は2018年現在、1・42で業界トップ水準の高効率を維持する。中国CITICと合弁を組む中国ビジネスは人口や経済規模から期待は膨らむ。小川氏はファー・イースト社時代、同社トップと共に世界中を回る中でグローバルビジネスとは何かを学んだ。中でも、個々人が交渉力と決断力を備えて現場の商談を仕切る華僑のビジネスシーンは示唆に富む。人材育成も重要課題とする小川氏は、グローバル市場で修羅場をくぐり、小さな成功体験を重ねることで胆力を身に付けることが必要と説く。同時に今後は、アナログ経験知やデータのデジタル化も不可欠になると語った。