デジタル時代の特徴は、顧客接点が時間、手段ともに飛躍的に増加したことである。かつては一点突破型の強力なメッセージを大量広告で投入することが成功法則だったが、現在は小さくても多面集合体のメッセージをマメに続けることが重要である。
知覚品質(ブランド認知と連想)をいかに創出するかというマーケティングの本質は変わらないが、その見せ方は時代にあわせて変えていくことが必要である。
市場が成熟している現代は、差別化が難しく、ユニークな知覚品質は創りにくい。そこで既存の顧客だけを見るのではなく、生活者すべてに視座を広げることにより、有効な新しい知覚品質に気づく可能性がある。それは言い換えれば、新市場開拓である。近視眼的な新製品投入はブランドを希釈させ弱体化につながるが、新市場開拓は新しいブランド価値の創造につながる。
広い市場に向けて多様なメディアを活用し、ブランドノイズを上げていくことがデジタル時代の方法論である。ただし、発信が簡単で多様化したからこそ、何を訴求するかが勝負の分かれ目となる。できれば、二次拡散される現代の特徴を考慮して、増幅されやすいコンテンツを選択したい。
デジタル時代は、過去のコンテンツも蓄積されるので、累積効果や遡及効果も期待される。実用性、継続性、更新性、丁寧さがKSFである。
また、情報量が増えるからフェイクやステマが混ざってくる。本物であるためには、実体(アナログ)が重要となる。デジタル時代だからこそ、アナログと組み合わせられる老舗メーカーの強みがある。
例えば、ベビースターラーメンは、お菓子から「食」全体へ市場を広げ、料理素材としてのポジションを見出した。多様なメディアで食べ方提案を強化、飲食店やコンビニとのコラボにも注力することで、消費シーンが強化され、業績が上がった。
このように、マーケティングの本質を捉えながら、デジタル時代の手法を駆使することで、今の時代も生き残ることができる可能性が高まるのである。