財務会計から管理会計への移行はコスト区分を変えることにある。決算書で区分されている「売上原価」と「販管費」を総コストと認識して、管理会計では「変動費」と「固定費」に分類する。変動費は売上数量に比例して増減する経費、固定費は人件費や減価償却費のように売上に関係なく一定にかかる費用である。売上から変動費を引いたものを限界利益と言うが、売上に比例するものであり、比例利益と捉えると分かりやすい。売上から総コストを引いてゼロになる値が損益分岐点であり、それを上回れば黒字となり、下回れば赤字となる。
変動費中心である会社の利益は、売上が増えても急増しないが、売上が減っても大きく下がるわけでもないローリスクローリターン型である。固定費中心である会社の利益は、売上が少しでも上がると大きく伸びるが、売上が少し減っただけで大幅に落ちてしまうハイリスクハイリターン型となる。マクドナルドが1990年代に販売した210円バーガーの原材料費は57・5円で営業利益12・9円だったが、100円バーガーを打ち出すと売上数量が20倍も上がり、営業利益は34・7円まで上がった。さらに利益増を見込んで65円バーガーを売り出したが、販売数量は伸びず赤字になってしまった。
値下げ戦略で成功するには、コストに占める変動費が低く、値下げによって販売数量が大幅に増加することが条件となる。1個当たりの限界利益が幾らで、それを積み上げて固定費を上回るだけに持っていけるかという試算は方程式で可能である。大量の商品を売りさばくだけの能力には限界があり、安ければ安いほど買うものなのかという顧客動向や、競合店が追随してくると客は分散するなど、値下げによる数量増加計画は容易でない。むしろ商品価値を上げることに注力、良さを分かってくれる人に品質が優れた商品を提供することが望ましい。簿記に始まり、財務会計から管理会計まで来るとマーケティングと重なってくる。管理会計を学ぶことで数字的にシミュレーションして経営計画を立てられることが大切となる。