P/Lは、収益から費用を引いて利益を計算する。キャッシュフロー計算書とは文字通り現金の流れで、収入から支出を引いたものを純収入として表すもの。帳簿上で利益が出ていることと、お金があることは異なる。きちんと収入があり、支払いの前日に銀行残高があること、年次ではなく毎月の支払いが滞りなくできるだけのお金が回っていることがポイントである。現金が重要であるにもかかわらず、P/Lが生まれたのは歴史的背景を見るとよく理解できる。19世紀にイギリスで蒸気機関車が発明され、鉄道事業を始めることになった。土地の購入、線路の敷設、駅や機関車をつくるとなると莫大な費用がかかり、資金を調達したとしても当面赤字が続くのは明白で、黒字になってから配当を出すとなれば出資した時期により株主に不公平感が出る可能性がある。そこで編み出されたのが減価償却の仕組みだ。巨額な支出も当期だけでなく何年もかけて分割して計上することで、実際はお金がなくても利益が出ているように見せて、財務の健全性をアピールできるというルールをつくった。これにより経営者にも株主にとってもP/Lは大きな指標となってきた。
産業革命に成功したイギリスでは会社設立の自由化が進み、専門職として財務チェックや監査などを行う会計士が初めて誕生した。減価償却を導入してからP/Lは収入・支出を収益・費用に入れることが解禁され、掛け取引や前払い、借入金のように、将来支払う予定の支出や見込み収入などを前もって計上するといった、何でもありの発生主義会計となった。そうなると、意図的に操作されるなど利益が抽象的で分かりにくくなる。会社が倒産するのは自己資金がなくなったときだ。P/L上では利益が出ているのに黒字倒産が起きるのは、現実のお金の動きと一致していないからである。つくられた利益では事実が見えづらく、原点回帰しようと現金主義であるキャッシュフロー計算書が生まれた。決算書では、P/Lの利益だけでなく実際のお金の動きに注視することが必要であろう。