ガバナンスは、不祥事を防ぐ「守り」が主体となるが、経済産業省は米国や欧州に比べて特に低い利益率を上げる「攻め」に問題意識を持った。ガバナンス改革で策定されたのが、機関投資家の諸原則「スチュワードシップ・コード」と企業の行動原則「コーポレートガバナンス・コード」で、中長期的な視点に立った企業と投資家が建設的な対話により、株主は投資リターンの拡大を、企業は企業価値向上の推進を図る。グローバルな企業再編が進み、変化が激しく将来予測が困難な時代に業績改善で効果が最も高いのは「経営者」だ。日本では社員の延長として経営者となる場合が多いが、世界では株主の負託を受けた者がトップに立っており、日本も徐々に変わりつつある。
社長・CEO後継者計画は、取締役会で全体方針を決め、5年後の経営環境を見据えた上で、あるべき社長像と評価基準を定め対象者の評価と絞り込みを行う。指名委員会では、経営と経営人材に対する知見、謙虚さや責任感等の資質を備えた適格な指名委員を確保、現CEOと適切な距離感を保ち、公平に判断する。候補者の功績・やる気・能力・人柄等を、客観的な人事情報として現CEOと格差なく提供することが最大のポイントとなる。
トップに求められる能力や資質は戦略構想力・リーダーシップ・達成志向性・多様性対応力・決断力など多岐にわたるが、全てが満点な人はいない。戦略構想力は50代を過ぎると鍛え難いが、リーダーシップはコーチング等により変えられる部分もあり、何を重要視するか見解を統一する。うまくいっている仕事は触らず人との争いを避ける管理職に対し、順調なときこそ変化の好機と捉え衝突も恐れない経営者がいるように、優秀な管理職から卓越した経営者を選ぶことは難しい。候補者には、タフアサインメント(困難な課題を割り当てること)を経験させることが重要である。経営者育成と計画をガバナンスとして機能させるためには、どういう仕組みが必要か、コーポレートガバナンス・コード等に照らし合わせて積極的に取り組むべきである。