岐阜県出身の長谷川氏は、2008年名古屋大学理学部を卒業後、同年5月に就労支援を展開する株式会社ウイングルに新卒として入社。翌年8月、同社の代表取締役社長に就任した。
小さなころから注意欠陥多動性障害(ADHD)傾向だったが、おおらかな両親の下で、さほど気にせず過ごすも、中学・高校時代は周りの空気が読めず孤立していた。大学時代にアルバイト先のオーナーが、「敦弥君はみんなと違う。だから世の中を変える才能があるかもしれない」と常に褒めてくれたことが転機となり、自分の特性をポジティブに捉え社会に役立てたいと考え就職。入社3カ月目で、全役員にメールで理路整然と減俸を提言し納得を引き出した。事業内容の改善を旺盛に進言し続けた結果、創業者が仙台市長選に出馬を決めたことを契機として、2年目にして社長交代となった。
LITALICOとは、関わる人の幸せを実現することが自分たちの喜びにつながるという、利他と利己の造語で、2014年に社名変更した。眼鏡やコンタクトレンズのように困難を解決する製品やサービスを社会の側に整備することで、生きにくさを取り除いた障害のない社会づくりを社是に掲げている。主力事業は、補助機器の開発投資のほか、発達障害の子ども向けに基礎学力と社会性の体得を図る「LITALICOジュニア」、ものづくり教室の「LITALICOワンダー」がある。障害認定者は1割負担制度を活用、ほかは100%自己負担で通う。年間ユーザーが250万人に上る「LITALICO発達ナビ」でインターネット分野にも進出している。
学校で自己肯定感の下がる子どもも、自分が興味のあることには目を輝かせ飽きずに取り組む。一人一人の個性に合った学び方で学習意欲を高める同社の取り組みは、今後の公教育の在り方に一石を投じることになるまいか。長谷川氏の『発達障害の子どもたち、「みんな同じ」にならなくていい』も合わせて一読されたい。