デジタルの進化は、マーケティングを複雑化し、事業そのものまでも変えている。これまで企業と生活者との接点はほぼ広告コミュニケーションだけであったが、デジタル化した現在は「サービス・機能」という回路がそこに加わった。サービス・機能とは、企業と生活者が直接つながって継続的に関係を深めていくしくみであり、そこにこそ企業のブランディングがある。
これから、企業は生活者に対して「生活者価値」を提供しなければ利用を続けられないだろう。ビジネス課題を生活者価値に転換するものがUX(User Experience:ユーザー エクスペリエンス)手法である。
これまで企業が行ってきたPromotionは、様々なメディアを活用して、短期的な盛り上がりを作るものであったが、UXは、システムやデータを活用し、サービス・機能を提供することで、ブランドと生活者との中長期的な関係を築くものである。
これからの事業やブランドの競争は、サービスとしてのUX向上の戦いになる。これまで企業は商品の品質やチャネル価格などで競争優位を持とうとしてきたが、今後はブランドストーリーや購買利便性、種類多様性が競争優位性となる。
すべての企業活動はUXを提供するために最適化されていくべきである。UXマネジメントは、単にUXをデザインするものではなく、UXstrategyが前提となる。それは事業課題・コアコンピタンス、生活者インサイト、テクノロジーチャンスという3つの視点の交わりの中にあり、実現難易度が高く、模倣困難なものであるべきでる。
しかし企業内でUXはテーマにされにくい。どの部署が手掛けるかという組織の壁があり、必要な人材が集まらないという壁もある。
一見ロジカルでも対症療法的なアプローチだけではよいUXにならない。まずStrategyとしてUX視点の事業コンセプト規定があり、コンセプトに則したサービスデザインがあり、その後、検証、オペレーション整備と続けていく。Strategyがあるから新しい生活者のプロセスを作れることを忘れてはならない。