日本生産性本部の企業調査によると、最近3年間の「心の病」は、増加傾向は抑えられているが、横ばいと回答した割合が高まり、減少という段階には至っていない。本番組では、慶應義塾大学大学院政策メディア研究科特任講師であり、組織や企業でキャリアカウンセリングに携わる宮地夕紀子氏と、株式会社博報堂人材開発戦略室キャリアデザイングループにて社員の自律的キャリア形成支援の施策開発・運営と研修の進行支援を担い、臨床心理士としても活躍中の田村寿浩氏を招き、健康経営と専門職の役割や課題について伺う。
2014年に「労働安全衛生法」が一部改正されたことに伴い、2015年には、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐため、事業者は従業員にストレスチェックを行い、その原因となる職場環境の改善につなげることが義務付けられた。従業員がキャリア形成を自律的に行えるようにするための支援を組織が積極的に行う必要も出てきた。そのため厚生労働省では、キャリア・コンサルティング技能士(1級・2級)に次ぐ標準レベルの「キャリアコンサルタント」を本年4月より国家資格として創設した。職場と関係する産業保健スタッフには、民間資格である産業カウンセラー、国家資格を持つ精神科医・心療内科医、臨床心理士がいる。実際に臨床心理士が勤務している領域は、保健・医療、教育、福祉、大学・研究所が多く、産業・労働領域では3・99%にすぎない。日本で初めての心理職国家資格として「公認心理師」を設けることが2015年に決定、2017年より実施されることとなった。心理学的に専門性のある人が職場でサポートしなければ、キャリア支援だけでは十分に健康経営ができないということだ。キャリア相談であっても、遺伝的な素因で本人がもともと持っているものか、ストレスによる適応障害か、発達障害的素因があるのか、最初に見立てを行い、適応の見通しを立て、経過を追いながら検討していくことが大切だ。原因を突き止め、除去できるものは対処する。何でも課題を直面化させればいいというものでもない。職場復帰のタイミングは個別に十分検討する必要がある。人事の方針、就業規則、業種・業態の特徴、職場責任者の考え方などを理解して、アドバイスを行う。専門職には、従業員が疾病や困難を抱えながらも働き続け、いい仕事ができるように、より現場に近いところで健康づくりを手助けすることが求められている。基本的な人間力を土台に、心理の専門性を持ち、仕事を理解した上でキャリア形成支援ができる人を活用することにより、組織や企業には健康経営を実現していただきたい。
スライド 時間 タイトル 00: 00: 00 健康経営と専門職の役割り~臨床心理士が語る健康経営の課題~ 00: 01: 28 宮地夕紀子氏 プロファイル 00: 02: 27 田村寿浩氏 プロファイル 00: 05: 21 健康経営と専門職の役割り~臨床心理士が語る健康経営の課題~ 00: 05: 41 改善下げ止まり傾向にあるメンタルヘルス状況 00: 07: 07 労働環境改善への取り組み 00: 08: 01 ストレスチェック制度 00: 12: 20 「職業性ストレス簡易調査票」の項目(57項目) 00: 13: 02 本人に通知するストレスチェック結果のイメージ 00: 21: 15 キャリア形成支援 00: 23: 19 キャリアコンサルタント制度の新旧比較 00: 24: 33 キャリアコンサルタント資格 00: 28: 09 職場と関係する事業場内・外産業保健スタッフ 00: 35: 41 臨床心理士の主たる勤務領域 00: 36: 24 心理職の国家資格化 00: 38: 24 一例として 00: 48: 19 実際の業務から:(田村氏の場合) 00: 54: 11 健康経営と企業内における専門職の役割、課題 00: 59: 17 今日のまとめ