いま「健康経営」という概念が企業の関心を集めている。健康経営とは、従業員の健康管理を経営的視点から戦略的に実践することにより、企業価値を高めていこうとするものである。本番組では、慶應義塾大学名誉教授で、SFC研究所キャリア・リソース・ラボラトリの花田光世氏を招き、なぜ健康経営が必要なのか、企業は健康経営にどのような考え方で取り組んでいくべきか、生涯現役で長いライフキャリアを生き抜く現実などについて解説していただく。
現在、健康保険組合の9割は赤字状態で、累積赤字総額は3兆円弱となり、企業が補填するにも限界に来ている。高齢化社会により医療費は増大、企業ではメンタルヘルス不全に対する費用が拡大、健康経営への取り組みは不可欠となってきた。プレゼンティズム(出勤しているが、健康上の問題で本来発揮されるべき職務遂行能力が低下している状態)で企業の生産力に悪影響を与えていることも問題となっている。経済産業省や日本商工会議所等が進めている健康経営は、健康を「管理」することに軸が置かれている。花田氏は、健康を「管理」した上で、健康を「開発」し、キャリアコンサルタントを積極的に使って「活用」していく視点が必要だという。不安を抱えながらも前向きに一歩踏み出していくことが現実である。人事・教育・キャリアといった部門は、元気度指標をベースとした個人カルテや役割を、個々人は能動的・主体的に自分で自分の可能性を広げて元気になる場をつくっていく。第1次予防として、働きがいを見つけ、前向きな活動を習慣化し、成長を実感するため継続的に学習するなど、元気が続く習慣づくり。第2次予防として、上司は部下とコミュニケーションを取り、元気を喪失していることを早期発見すること。第3次予防として、元気をなくした人に寄り添い、受け止め、自分で自分の人生を切り開く力や自己肯定感を取り戻して元気回復させること。これらの仕組みを抜本的につくり込むことが大切となる。個人も、自分の健康は自分でつくるという意識や責任感を忘れてはならない。組織は、個人の自主的な活動を側面からサポートする。特定の支援が必要な人には、合理的な配慮をベースに支援を行う。キャリアアドバイザーが健康経営アドバイザーを兼任できれば、活動の幅も広がる。働きやすさや働きがいは、企業が全部お膳立てするものではない。キャリア自律の時代において、どのような状況にあっても、自己責任で動機付けをして能動的な工夫をしながら、役割発揮に努力していく働き方が求められている。
スライド 時間 タイトル 00: 00: 00 メンタルヘルスから元気に向けて 00: 01: 13 花田光世氏 プロファイル 00: 02: 56 メンタルヘルスから元気に向けて 00: 03: 03 今日のアジェンダ 00: 03: 41 はじめに 00: 04: 15 健康管理型健康経営の課題 00: 07: 05 従来型健康経営の視点 00: 07: 31 従来の健康は経営視点で見た場合「健康管理」 00: 10: 06 資料(1) 00: 11: 22 健康保険組合の問題を考えると 00: 14: 05 健康管理から健康経営へ 00: 14: 18 まとめると:健康管理から新健康経営へ 00: 19: 08 不安のカルテではない、元気度のカルテ作成 00: 23: 31 見えにくい元気 00: 26: 04 健康の定義 00: 28: 10 アレン・フランシス:正常を救え(Saving Normal) 講談社、2013年10月 00: 28: 28 大うつ病の定義(DSM-IV) 00: 35: 28 資料(2) 00: 38: 17 第一次予防では 00: 40: 15 第二次予防では 00: 42: 40 第三次予防では 00: 44: 39 まとめると 00: 49: 10 法律が変わります 00: 53: 44 働きやすさ・働きがい・働きざま 00: 54: 31 働きやすさの延長に加わる新要因 00: 59: 08 今日のまとめ