バブルの崩壊により、1200~1300兆円もの資産価値が減少しました。また更に、金融ビックバン・会計ビックバンの流れを受けて、企業は時価会計・連結会計を進める必要があります。企業の問題となるのは自己資本の不足です。まだ日本が右肩上がりの成長を続けていた時代、多くの企業が多角的な事業を行ってきました。全体的な成長が望めない現在、多くの低成長・低収益事業の中に埋もれて、高成長・高収益事業の可能性がある事業が適正に評価されない「コングロマリット・ディスカウント」になっているものがあり、自己資本調達の妨げになっています。今回は本社の取締役会が特定事業の意思決定をコントロールしながら特定
事業の自己資本を公開する「トラッキング・ストック」をご紹介します。
トラッキング・ストックが導入された背景には、コングロマリット・ディスカウントになっている高成長・高収益の可能性がある事業に対して、自己資本を調達するには本社と切り離して子会社にして株式を公開するしかありませんでした。その場合、事業のコントロールの一部を外部に渡すことにもなり問題点もありました。そこで、事業のコントロールを外部に渡したくない場合にトラッキング・ストックを活用して意思決定をこちらでコントロールできるようになったのです。
トラッキング・ストックとは、特定事業の自己資本を外部に公開することです。本社と切り離して子会社にすることなく、本社の一事業部の中で公開し、本社がトラッキング・ストックを発行します。議決権に関しては本社が持ち、株価も普通株価とトラッキング・ストック株価と2種類あります。
法人を分けた株式公開とトラッキング・ストックと比較して、トラッキング・ストックの方が組織の仕組みも最低限のものを作ればよいとされ、意思決定もスムーズに行え、信用面・自己資本面・撤退処理面などについてもメリットがあります。但し、注意しなければならないのはトラッキング・ストックを実施するには組織の体制をカンパニー制に移行し、カンパニーごとに監査した財務諸表を作らないといけません。
トラッキング・ストックを実施する際に注意しなければならない点は、普通株主に対して、トラッキング・ストックが借入金利を低減させるので信用面で格付けの向上につながるなど利害関係の調整を行う必要があります。同様に本社に対しても間接部門などの関係を整理することなどが必要になります。
またトラッキング・ストックを実施する際に法制の手当てを行う必要があります。具体的には、現在発行にあたっての定款の変更は、株主総会の特別決議を経て法務省に登記の申請をしますが、法務省の見解がはっきりしていないので法律の整備を、2002年を目標にすすめています。また2つの株価が発生するため議決権の公平性を保つために価格設定や議決権の変動制などについて対応しなければなりません。また事業ルールとしての会計ルールを確立することも必要です。