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BPUプロフェッショナル系 組織人事 > 組織人事ライブ596

集団主義文化の本質から日本の組織を考える(1)
ゲスト:山岸俊男氏(一橋大学大学院国際企業戦略研究科 特任教授)


概要:
日本の企業は「自前主義」と称されるように、全て自分たちの手で進める傾向が強く、海外企業との連携でも資本関係を結ぶなど、目が行き届く状態にしなければ、なかなか安心できないという志向が見られる。日本の経済は転換期に差しかかり、海外進出やBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)が飛躍の鍵になる現代、どのように発展機会を生かし、負の側面をコントロールすればいいのか。今回から2回にわたり、社会心理学の分野で活躍されている山岸俊男氏を迎え、日本型組織人事の本質を分析・解説する。
人間は自分たちがつくった文化や環境に拘束され、そのニッチ(生息環境)に適応する心の性質を自然と身に付けて生きている。例えば、東南アジア某国での生ゴムの売買は、特定のゴム農園主と仲買人との代々続く関係による取引である。ゴムは実際に製品化されるまで品質の良しあしが見極めにくく、生ゴムの段階ではだまされる危険性があるため、よく知っている相手から購入するのが通例だ。このように特定の相手と長期的関係を形成し、関係内部だけで付き合う「集団主義」の中では、悪い評判が広まると誰とも商売ができなくなるため、人々は周りから嫌われないように身を慎むような心の性質になっていく。このように、集団に属している限りは取引リスクを恐れる必要がない「安心社会」は、日本の組織における所属の安心感や、周りを気にして休みが取れない心情にも通じるだろう。
一方、同国のコメ取引は、品物を見れば質が分かり、事業者数も多いため、誰でも介入できるオープンマーケットになっている。自分の裁量で利益を追求できる「個人主義」的な市場は、司法制度によって最低限の保障が確立されることで成り立つが、当然、自己責任やリスクは伴う。このように、相手が信頼できるかを常に見極めなければならない「信頼社会」では社会的知性が不可欠だが、慎重になりすぎて裏切られることを恐れ、安心社会に閉じこもっていては、集団の外部にある機会や利益を逃してしまう。人を信頼すると、だまされるリスクがある反面、信頼が報われたときに得られる利益も大きいものである。
日本人は自分たちのつくったニッチによって、慎重性が高く、初対面の人に対する信頼度が低い傾向にあり、信頼社会に踏み出すことをためらう人が多いのではないだろうか。
危険を感じたときに、すぐに回避できる知性や能力があると、ひとまず他人を信用しても大丈夫だと考えられるため、一般的に賢い人の方が人を信頼する傾向がある。危険をすり抜ける賢さを身に付けるには、トライを繰り返し、経験を積むことが何より大切だ。
 講義タイムテーブル:
スライド 時間 タイトル
00: 00: 00 集団主義文化の本質から 日本の組織を考える(1)
00: 01: 11 山岸俊男氏 プロファイル
00: 03: 08 集団主義文化の本質から 日本の組織を考える(1)
00: 03: 18 今日の流れ
00: 03: 41 初めて会った人に対する信頼(1)
00: 04: 53 人間はニッチ構築者である
00: 05: 45 初めて会った人に対する信頼(2)
00: 06: 34 コメの取引と生ゴムの取引
00: 08: 41 集団主義的な秩序形成原理
00: 09: 38 なぜ米の取引は、生ゴムの取引と違うのか?
00: 11: 04 社会的ニッチ構築者としての人間 制度としての文化、秩序形成原理
00: 12: 23 集団主義的な社会のもとでの集団主義的な考え方
00: 12: 34 安心社会 = 集団主義的な秩序が有効に機能している社会
00: 14: 29 集団主義的秩序が高くつくようになると? 地中海貿易の覇権:マグリブ商人?ジェノア商
00: 17: 32 個人主義的秩序のもとでの、個人主義的な考え方
00: 20: 30 信頼社会 = 個人主義的な秩序が有効に機能している社会
00: 23: 32 「信頼」の意味
00: 25: 00 安心と信頼
00: 27: 27 安心 = 針千本マシン
00: 27: 41 嘘つくと酷い目にあうんだ。だから嘘はつけない。
00: 27: 45 嘘ついちゃった!
00: 27: 50 針千本マシンがあれば、安心していられる → 安心社会
00: 30: 05 渡る世間は鬼ばかり、危ない危ない 仲間に囲まれていれば安心できるよね
00: 30: 22 だけど、仲間の中に閉じこもっていると、外部の機会をのがしてしまう
00: 31: 56 とりあえずは「外に出ても大丈夫」と思えるように、高い一般的信頼を持つ(1)
00: 32: 06 とりあえずは「外に出ても大丈夫」と思えるように、高い一般的信頼を持つ(2)
00: 37: 39 高信頼者は、必ずしも騙されやすいわけではない
00: 37: 44 高信頼者はIQが高い(1)
00: 38: 50 高信頼者はIQが高い(2)
00: 38: 59 感情的知能 一般的信頼
00: 41: 20 作り笑いが見分けられますか?
00: 44: 00 非協力者を見分けられますか
00: 44: 46 資料(1)
00: 49: 24 正確さ得点
00: 50: 23 資料(2)
00: 51: 27 初めて会った人に対する信頼(3)
講師紹介: 高橋 俊介(たかはし しゅんすけ)
慶應義塾大学SFC研究所上席所員
組織・人事に関する日本の権威の一人。プリンストン大学大学院工学部修士課程修了。マッキンゼー・アンド・カンパニー、ザ・ワイアット・カンパニーに勤務後、独立。
人事を軸としたマネジメント改革の専門家として幅広い分野で活躍中。
主な著書に『自由と自己責任のマネジメント』、『自立・変革・創造のマネジメント』、『キャリアショック』、『組織改革』、『人材マネジメント論』など。

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  アシスタント:岩崎 里衣

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