クックパッド株式会社(当時有限会社コイン)は、1997年に佐野陽光氏が創業した。中心コンテンツがレシピということもあり、理系男性社員が多いことに意外感を持たれるが、エンジニアである創業者佐野氏を中心に磨き上げたサイト管理技術が同社成長の礎になっている。 小竹氏は、関西学院大学社会学部を1996年に卒業、博報堂アイ・スタジオでウェブサイト運営ディレクターとして活躍した後の2004年、同社に入社した。クックパッドが軌道に乗る前のユーザー獲得が最優先課題の時期で、とにかくレシピを載せてもらうために奮闘したと氏は振り返る。その試行錯誤の中で生まれたコーナーがある。きっかけは、掲載レシピの調理例を別のユーザーがサイトに載せたこと。それが共感を呼び、一挙に広がった。写真も充実した「つくれぽ」という人気コーナーで、ユーザーの積極的参加が原点にある。レシピニーズは、時間や、材料が限られている人などには切実なものが多い。ボリューム感を演出する「かさ増し」コーナーも女性たちの隠し玉として絶賛の的だ。 小竹氏は、こうした中でレシピコンテストを実施した。焼き肉のたれでおにぎりをつくるなどのアイデアレシピも注目され、メーカーとのタイアップも実現、サイトの人気レシピをまとめた『100万人が選んだ大絶賛』シリーズの出版に至る。レシピランキングが閲覧できる有料会員は月294円の課金のみだ。社長室長に就いた氏は、社員が自由に料理を実践する場として「社内まかない」を設置した。理系男性の料理感性をも刺激する効果を挙げ、ユーザーとの一体感醸成の役割を担うことになる。氏自身も自社サイトに投稿を繰り返し、料理当事者の気持ちを何よりも大切にしてきた。 サイトの躍進を見届けてから同社を退社した氏は現在2児の母。クックパッドではワークライフバランスを「かっこよく」実行できなかったと漏らす。こつこつ積み上げるリーダーと自称する氏の次なる夢は子どもの食の分野。クックパッド同様、熱烈ユーザーを最初に獲得する手応えは十分にある。
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