DOWAホールディングス株式会社は明治17年創業、従業員数は約5,000名の老舗企業である。
事業内容は金属を製錬・加工、商品化をして使用後は回収、資源化・無害化を行いリサイクルするという
循環型のコアビジネスを実現させている。
戦略としては、1980年代は鉱業と製錬で成果を挙げていたが、1990年代には事業の多角化、売上倍増計画に失敗、
90年代後半には「人・モノ・金」の余剰で苦境に立たされることになった。
この時期に吉川氏が専務となり事業構造改革のスタートを切ることになる。
改革の内容は著書『壁を壊す』に記されている。
その経営手腕が注目されCNBC2008年経営者賞を日本人初で受賞された。
改革の柱は二つ。戦略的事業改革と文化風土の改革である。
まず三つの投資基準をつくり、一つ一つの事業をまな板に乗せて「選択と集中」を行った。
投資基準は「市場があるか、将来成長するか?」「競争力が当社にあるか?」「社員のやる気があるか?」
と決めて一つでも欠けていたら撤退と決めた。
中には黒字の事業もあったが旧式のやり方を徹底的に破壊した。
文化風土の改革ではさまざまな壁にぶつかったが、組織、社風、上下階層等の壁を取り払い、
物理的にもオフィスの壁を撤去、完全自由席化として風通しをよくした。
改革の裏には幹部たちの大反対があった。
スピード感の戸惑いや文化歴史を守りながら改善してはという声もあった。
しかし「改革」は「改善」ではない。現状を肯定する改善ではもはや立ち行かなかった。
改革のプロセスをはっきりと示し、徐々に「改革」を共通認識にしていった。
吉川氏は社長になる以前、主流の位置にはいなかったので本社の体質を冷静に見てきた。
だからこそ古い考え方を払拭したやり方が生まれたのであろう。
新しいものが起こるとき「イノベーションは辺境から生まれる」といわれるが違う目線にいたほうが実情がよく見えるものである。
「選択と集中」はリーマン・ショック後の現在も続けられている。