日本という国は、為替の急激な変動やアメリカからの圧力にも関わらず長きに渡り輸出が輸入を上回る貿易黒字を当然のように計上する国であった。
しかし昨年後半、ついに赤字に転落することになった。
これを単に金融危機によるアメリカ景気の落ち込みを原因とする一時的な現象だと捉える向きもあるが、
仔細にデータを見てみると、長期的な流れの末に至った構造的な現象だということが分かる。
貿易の中身を見てみると、最早アメリカは最大の直接輸出国ではなくNIEsにその地位を譲っている。
20年前と比べてアメリカとの貿易はあまり増えていないが、
NIEsをはじめ、中国やASEANとの貿易は輸出入ともに大幅に増加している。
その中での貿易赤字化は、日本がアメリカのような輸入超過経済構造になったのだと考えることができ、日本経済にとってシリアスな要因である。
構造変化の要因の一つは日本の製造業が海外に移転したことである。
当初は、日本から部品等を調達しなければならなかったはずだが現在ではほとんど現地調達、現地販売の域内で完結するビジネスを作り上げている。
現地の部品企業の能力は徐々に向上しており、日本国内に残った産業クラスター(大田区や東大阪)は需要低迷にあえぐこととなっている。
かつてアメリカが国内製造業の海外流出に直面した折、いわゆるレーガン革命による規制撤廃によりソフトウェア、金融、航空機などの新しい産業を生み出し、
世界中から投資を集め雇用を守った経緯がある。
しかし日本は規制改革が遅れており製造業に代わる産業が育つ兆しが見えない状況である。
これからの日本企業はアジア全体をあたかも日本の国内であると捉えて、
日本の7倍の成長率を誇るアジア地域のポテンシャルを最大限に活用すべきである。
インフラが整備されてきているアジアの一番安いところで造り、最適地で売るというビジネスの原点に忠実に従うことが生き残る道である。
日本国としては、残った外貨準備高を大切に扱って、無駄な為替介入はすべきではない。
同時に、日本が競争力を持つ“環境、省エネ、素材・部品”分野などから新しい産業を生み出し、
相応しい人材を育成することに長期的に取り組んでいかなければならないだろう。