金融危機の中、100年ほど前に唱えられたケインズのマクロ経済学がスポットを浴びつつあるが、
これは平常時の経済原論であって、100年に1度の経済危機においては用を成さない。
ケインズ経済学の教えのとおり、たとえ中央銀行が金利を引き下げたとしても、
危機に対処する人間の行動を分析した心理経済学の視点が欠けているため、
末端の企業に貸し出される資金はリスクを見込んだ金利が上乗せされ、結果、企業は資金を調達できない。
景気の悪化により、企業においては雇用、設備、負債の過剰が増している。
産業別では、製造業、流通業の悪化が激しく、特に、キヤノン、トヨタ自動車などの耐久消費財関連産業では、
正社員を含めた大幅なリストラ計画が発表され、雇用環境は急速に悪化してきた。
マスコミも国会も、経済危機の結果として生じた雇用問題の解決(失業者の救済)に焦点を当てているが、
派遣労働を規制するなど、雇用を固定化する政策を採ると、企業が海外に流出し、結果的に雇用がさらに失われることになる。
世界で最も高い賃金水準にある日本の製造業労働者は、低賃金国の労働者との競争にさらされている。
日系製造業は今後ますますアジア諸国への雇用流出を加速させ、為替変動に中立な最適地での生産体制を確立する方向に動くであろう。
雇用創出を目指した現在の日本は、
経済危機に対処する方法の優先順位を間違えており、弱者救済を優先するのではなく、
日本の国力・競争力を高めることを優先すべきである。
政治家やマスコミは一部の極端な失業難民をセンセーショナルに取り上げているが、
今の日本では失業してもセーフティーネットが充実しており、飢え死にすることはない。
ドイツの例を見て分かるように、失業者は手厚くするほど働かない人が増える傾向にある。
雇用問題は、格差・弱者救済という視点ではなく、国際的な競争環境の中で、
日本企業や、日本の労働力がどのように生き残るかという視点で現在の対策を考えるべきである。