定常期において、目的が共有されていて、部下にそれを遂行する能力もやる気もある場合には、リーダーは彼らの邪魔をせずに手助けすることに徹したほうがよい。
このような理論は、サーバントリーダーシップ論と呼ばれる。
信頼の土壌ができているなら、場面によってリーダーシップを発揮する人が代わってもよく、リーダーシップを共有することも試みられている。
それに対し変革期には、強いリーダーシップが求められる。
前回「成果重視」と「人間関係重視」の二つの軸によって
リーダー行動を分類するPM理論を紹介したが、変革期ではどちらも重視するべきだ。
金井壽宏教授はそれに加えてビジョンの創造が重要であり、
困難な目標を達成しようとするならば、人の心を動かす「夢」が必要だと指摘した。
例えば1959年に伊勢湾台風で5千人の死者と行方不明者が出たことを要因に、台風接近を知るために富士山頂レーダードームが建設されたときには、
「伊勢湾台風の悲劇を繰り返してはならない」というミッションが共有された。
だが大きなビジョンだけでは、困難を乗り越えることはできず、高山病に苦しむ作業員が脱落し始めた。
そのときに当時のリーダーは、
「男なら一生に一度は子孫に誇れる仕事をするべきだ。多くの人命を救うこのレーダードーム建設こそが、その仕事である」
と部下を励まし、現場の士気は一気に高まった。
高尚なビジョンを掲げるとともに、メンバー一人一人の胸を打つ個人的なビジョンを持たせることも、リーダーの仕事だ。
大きな変革を成し遂げるリーダーとなるべきは、組織を成長させてきたトップではなく、新しい価値を創造する力があるミドルマネージャーである。
経営管理学者、ロザベス・モス・カンターは、ザ・チェンジマスターズ論で、状況を見定めて変化する人、トランスフォーマーになることを勧めた。
自分のいまのリーダーシップスタイルを知り、チェンジマスター・リーダーへの道を歩むために、次回は番組の最後に提示したチェックリストに記入してから講義に臨んでいただきたい。