炭素繊維の強度は鉄の10倍以上、アルミよりも軽く、高い電気伝導率、優れた耐磨耗性、X線透過性などを有する優れた素材である。
これまでは、生産コストがかかりすぎるという問題があって、汎用というよりはスポーツ・レジャー用品、航空機等の限られた分野でのみ利用されてきた。
エコ意識の高まり、資源枯渇への懸念によってあらゆる製品にコンパクト化、軽量化が求められるようになった結果、
費用対効果が上がり、最近は自動車向けに検討が進められている。
化学業界では日本企業の世界的活躍は顕著でなかったが、炭素繊維に関しては東レ、東邦テナックス、三菱レイヨンの国内トップ3社が世界シェアの7割を握る。
生成には極めて特殊な生産工程と高い技術力が必要とされるため、他の国の追随を容易には許さず、
日本がこのまま世界のリーディングカンパニーであり続けることが十分期待できる分野である。
素材としての炭素繊維には、炭素繊維そのもの、プリプレグ(炭素繊維を一方向に引きそろえ、プラスチックを含浸させてつくったシート状の中間素材)等がある。
東レの強みは、素材自体の生成から商品への最終成形までを一貫して手がける点にある。
これによってユーザーの要求する製品イメージから逆算した素材の設計が可能になり、効率性が向上した。
東レの製品が最初はガラス繊維にヒントを得た釣り竿への適用から、ボーイング社の航空機の一次構造部分を構成するまでの信頼を得るに至った背景には、
歴代トップが、出口の見つからない状況でも、「必ず当たる」と素材に惚れ込んだ研究者の言葉を信じ、開発を進め続けた粘り強さがある。
東レは、2008年6月に炭素繊維を含む自動車向け部品の技術開発拠点として名古屋に設置したオートモーティブセンターに続き、
2009年4月からは、自動車メーカーと共同し、同名古屋に新設予定のアドバンストコンポジットセンターにて、自動車・航空機向けの樹脂・コンポジット・高機能ケミカル製品の生産体制を整えるなど、
炭素繊維部門に経営資源を重点投入する構えだ。