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> イノベーションライブ358:楠木建

システム再定義としての イノベーション


概要:
「イノベーション」という言葉は、革新を意味する言葉として、製品開発、あるいは教育など、多様な場面で用いられている。
しかし、その定義が正しく理解されているとは言い難い。
この概念を初めて提唱した経済学者シュンペーターは、イノベーションを「新結合」と呼ぶ。
本番組では、イノベーションを「システム再定義」としてとらえ、さまざまな製品が起こしてきたイノベーションを、実例を元に類型的に分類する。
さらに、システム再定義を困難にする要因を分析し、イノベーション研究の新しい次元を考察する。
1934年にシュンペーターが唱えたイノベーションという概念は、現代では「何か新しいことをする」「現状を打破する」などの意味で使われ、暗黙のうちに「アウトプット水準の変化」として考えられる傾向にある。
物や機能が足りない経済の成長段階では、機能的パフォーマンスの上昇が価値の向上に直結するなど、機能と価値の写像関係は単純であった。
成熟段階を迎えた現代経済では、外部システム再定義の必要性・有効性が高まり、イノベーション・マネジメントを再考すべき時に来ている。
しかし、「イノベーション」の中身がはっきりしない限り、その創出のための処方箋は描けない。

そこで、イノベーションの対象となるシステムを
  (1)物理、
  (2)機能、
  (3)価値の
3層の間に発達した写像関係として記述し、その上で、内部システムと外部システムの変化の組み合わせから製品イノベーションを類型的に把握する。

そこでは、
  ①リニアイノベーション、
  ②組み替え型イノベーション、
  ③カテゴリー創出型イノベーションの
三つの類型として分類され、内部システムと外部システムの変化割合によって、9個のレベルに区分される。

例えば、単なる技術革新にとどまっているゲーム機のPS3、PSPは、リニアイノベーション。
内部システムが変化したハイブリッド自動車のプリウスは、組み替え型イノベーション。
独りで記入するだけの日記帳から発展進化して、ネット上で不特定多数に情報発信してコミュニケートできるツールとなったブログは、カテゴリー創出型イノベーションなどと分類される。

現状を正しく分析することによって、技術の進歩を求めるだけではシステム再定義としてのイノベーションが容易に達成できないことに気付く。
イノベーションの本質は、「社会的に構成された既存のシステム境界に対する挑戦」である。
ただ技術革新を追い求めるのではなく、システムを俯瞰する能力を磨き、製品の境界を再考することで新たな価値を生み出す真のイノベーションを起こすことができるだろう。

講師紹介: 楠木 建(くすのきけん)
一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授
専攻はイノベーションのマネジメント。新しいものを生み出す組織や戦略について研究している。とくにコンセプトを創造する組織やリーダーシップに関心をもっている。一橋大学大学院商学研究科博士課程修了(1992)。一橋大学商学部専任講師(1992)、同大学同学部およびイノベーション研究センター助教授(1996)を経て、2000年から現職。著書としてManaging Industrial Knowledge (2001、Sage・共著)、『ビジネス・アーキテクチャー』(2001、有斐閣・共著)、『イノベーションと知識』(2001、東洋経済新報社・共著)などがある。論文多数。

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  アシスタント:西野七海

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