出版不況と言われる現状にあって、ケータイ小説というジャンルが活況を呈している。
2007年の年間ベストセラー(単行本/文芸書)では、ベスト10のうち、上位3位までを含む5冊がケータイ小説である。
ケータイ小説の草分けである「天使がくれたもの」(Chaco著)は、シリーズ4部作で100万部を超えるヒットとなっているし、
映画にもなった「恋空」(美嘉著)は、発売からわずか1ヶ月で上下巻計100万部を超える大ベストセラーとなっている。
その他にも、ケータイ小説の書籍化作品は、10万部以上のヒット作がコンスタントにある。
もともとケータイ小説とは、一般の人がケータイ向けホームページに書いている小説のことである。
その歴史は浅く、ケータイ小説総合サイト「魔法の図書館」が、ケータイコミュニティサイト「魔法のiランド」内にできたのが2006年である。
その後、「魔法の図書館」からは多くのヒット作が生まれている。
作者の多くは、職業作家ではなく、ごく一般の素人であるが、自分自身の体験に根ざした等身大の物語が、支持を受けている。
ケータイ小説には独特のリズムとテンポがあり、行間や会話文の使い方など一般の小説にはない特徴がある。
確かに文章には稚拙な部分があり、誤字、脱字も散見されるが、読者との双方向性、共時性が強く、同世代の読者の強い共感を呼んでブームを作っている。
ケータイ小説は今まで本を読まなかった世代を開拓したといえる。
さらには、コミックや映画などに展開しており、大きな市場性を持つに至った。
今では、複数のケータイ小説投稿サイトが開設されており、ケータイ小説を対象にした文学賞も多い。
若者の活字離れが言われて久しいが、実際には、多くの若者はケータイメールを通じて活字に親しんでいる。
そんな一般の若者が、ケータイというメディアを通じて気軽に小説を読み、また書くようになったのが現在のブームである。
これからも携帯で小説を書く人は増えてくると思われる。
今のところ、ビジネスとしてケータイ小説を書く人は少ないようだが、この大きなマーケットがどのように育っていくのかが注目される。