ポーター流の経営戦略論に照らすと、「すべての市場にフルラインの製品を提供」するというトヨタの基本方針は間違っていることになる。
しかしながら現実には、あらゆるセグメントで強みを発揮している。
それだけでなく、トヨタの社内には様々な矛盾が存在している。例えば、
・徹底した節約⇔大胆に使う
・プロセスから無駄を取り除く⇔会議にたくさんの人が、聞くためだけに出席する
・官僚制組織⇔上司に反論したり、指示を覆す
・じわじわ漸進する⇔大きく飛躍もする
といった部分である。
講師の竹内氏は、これらの矛盾の両面がそれぞれの意味を持って共存しているところにトヨタのすごさがあり、この矛盾こそがトヨタ経営のエッセンスかもしれないと説く。
また、『Extreme Toyota』の中で竹内・大薗両氏は、トヨタの中には極端に外に向かう「拡張力」と、その力を結合させる「結合力」という二つの力あり、それらがうまく組み合わさることで、ユニークさを発揮しているのではないかと主張している。
拡張力とは、
「実現不可能な目標」、
「現地顧客対応」、
「実験主義」であり、
これらの力は、現場従業員に火を付け、とにかくやってみることを促し、様々な顧客ニーズに対応することを奨励するといった、外側に拡張する方向に働く。
一方、結合力とは、
「創業者の哲学」、
「神経システム」、
「アップアンドイン」であり、
人間を尊重し、現地現物を重視するといった価値観を浸透させることによって、拡張力をより着実に発揮できるよう、内部で結合する効果を持っている。
「アップアンドイン」の人事制度では、長期安定雇用をベースとし、
課題創造力、
課題解決力、
組織マネジメント力、
人材活用力、
人望の
5点を評価の切り口としており、ソフトスキルを重視している点が特徴的である。
トヨタは、以上のような組織としての強さとユニークさを武器に、ところどころでジャンプ・飛躍もしながら、着実に、らせん状の成長を続けているのである。