これまで経営戦略論や経営組織論など、経営学の多くの分野が想定してきたのは、
確固たる価値観、評価のものさしに基づき、選択肢の一つ一つをいくつかの属性から数値的に判断して、合計点の高いものを選ぶという、冷静沈着に選択肢を分析し熟考したうえで意思決定が是とされてきた。
こういった合理的プロセスでなされた意思決定は、ほんとうに効率的なのか。通行人に5種類のジャムを試食してもらい、ランクを付けさせる実験をしたところ、専門家とほぼ変わらぬ答が返ってきたが、「なぜおいしいと思うか」の理由を求めると、成績はとたんに悪くなった。
舌ざわり、酸味など細かい分析にとらわれ、全体を見失ってしまったのだ。
1985年、アメリカのコカコーラ社はペプシ社のコーラに対抗し、綿密な市場調査と広告戦略を駆使して味覚の配合を変えたニューコークを発売したが、消費者から抗議が起こり、大失敗に終わった。
論理的な分析によるマーケティングの限界を物語っている。
意思決定においては、自らの「直感」の要素が加味されてこそ、賢い選択が可能となる。
ただ直感には簡便さと引き換えにバイアスがかかっていて、意思決定のプロセスを歪めてしまうおそれもある。
直感は万能ではない。
例えば新たな市場へ参入する際、ライバル他社に打ち勝てるか、採算は取れるかといった慎重な計算が必要になるが、大きな収益の気配がするからといっただけの理由で過剰参入に陥るケースも多い。
ノーベル経済学賞受賞のダニエル・カーネマンのプロスペクト理論によれば、人は一般にリスク回避型で、なるべく確実なものを選ぼうとするが、損失にかかわる問題だと認識したとたん、リスクの高い選択肢をとることがある。
これはゆがんだ直感が招いた誤った選択に起因する。
意思決定理論研究者であるジェラット博士によれば、直感は磨けるという。
右脳を活用し、常に決定をした先にある自分の将来をイメージする習慣をつければよい。
主観の悪い部分を客観的にコントロールすることができれば、選択の精度は飛躍的に増す。