一見、無秩序に行われている異業種格闘技も、プロセスを紐解くと、いくつかのタイプに分けることができそうだ。
まずは「顧客価値」から見る視点である。
同じ価値を提供している場合でも、例えば、アメリカ市場において、低価格戦略で大きなシェアを奪った日本の自動車メーカーのように“コスト構造の違い”がある。
また、インターネットのブラウザ市場において、マイクロソフト社のインターネットエクスプローラーがネットスケープ社のシェアを奪った背景には“事業目的の違い”があった。
有料のOS(Operation System)の“おまけ”として無料で提供されるインターネットエクスプローラーと有料のネットスケープでは、おのずと結果が見えている。
レコードとCDの競争には“技術の違い”、アスクルと文房具店には“ビジネスモデルの違い”がある。
アマゾンと本屋のように“リアルとサイバーの違い”、CD販売とレンタルに見られる“所有とレンタルの違い”も異業種格闘技が生じる要因となる。
一方、異なる「顧客価値」を提供していても“時間”“空間”“財布”という観点で見れば、同じ顧客・市場を奪い合う異業種格闘技の要因となる。
テレビとゲームは消費者の“時間を奪い合う”競争、立地という“空間”が重要なビジネスでは、実に様々な業界が駅近・駅ナカを争い、若者の“財布を奪い合う”という意味では、携帯電話会社はアパレルやゲームセンター業界と競争をしていると見ることもできる。
「仕掛け人の氏育ち」も異業種格闘技の大きな要素である。
例えば、航空業界に新規参入したスカイマーク、アマゾンや楽天といった“ベンチャー”は、既存のプレーヤーは既存のプレーヤーとはまったく異なるルールで競争を仕掛けてくる。
また、ごくまれに業界の中から異業種格闘技が生まれることもある。
日本発のインターネット専業証券と言える松井証券、あるいは中古車の買取に特化したガリバーなどは“業界異端児”と言えよう。
「戦い方」で見た場合、HISのように“小さく生んで大きく育てる”タイプ、セブン銀行のようにメガバンクがあって初めてビジネスとして成立する“小判鮫”タイプのように、既存のプレーヤーとの共存を図る“局地戦”という戦い方がある。
一方で、“シェア合戦”、メモリや電子マネーなどの“デファクト戦争”、フィルムからデジカメへの“置き換え”といった既存・新規のプレーヤーともに大きなリスクを伴う“全面戦争”もある。
これら3つのタイプ分けは、どこか一つに収まるというものではなく、重複する部分もあるが、こうした視点で競争をタイプ分けすることによって、自分たちの業界・企業に、どこから、誰が、どのようなビジネスモデルや競争優位性を武器に戦いを仕掛けていることが想定しやすくなる。