意志は、「個性化」という概念でユング心理学は定義する。個性化とは、
個人としての多様性をより際立たせ、その多様性が周囲にとって意味を持ち、自分の存在意義を深く感じられる状態を言う。
ただし、周囲から承認を得るための自分らしさの放棄、一つの偏った暗示のみによる個性の放棄といった自己疎外は、個性化ではない。
見せかけの自分の仮面をかぶり隠れること(ペルソナ=古代ギリシャの劇で使う仮面に由来)で、自分を守っても本当の個性化にはならず、自分に苦しみが残り、どこかで破綻する。
内側からわき出てくるひらめきや思いの具現化と、周囲をしっかりと見ることによる使命的な意志の両方がしっかりとつながったときが「個性化」であり、強い意志となる。
人間は、共時的な体験を経験したとき、そこに深い意味を感じ取ることで、何らかの意志が生まれる。
特に共時的な事象(Synchronicity)を伴って、本来はバラバラの事象がまとまって意味を持つ状態(布置:Constellation)になると、パーソナリティーの変容が起こりやすいため、新たな強い意志が生まれやすくなる。
個性化、共時性による気付きは、数十年かけて起こることもある。
自分の思いが不完全な状態で個性化を焦ると、間違った方向での意志を持つことになりかねない。
自分がどういう人間として存在したいかをクリアにして、周囲に対して高い覚醒水準を持って、焦り過ぎず、常に意識しておく姿勢で臨めば、間違いない意志を持つことができる。
以上のように、
心理学的な視点から見た意志は、非常に深いものであり、常にこのような取り組みを意識することは難しい。
どこかにこのような考えを持ちつつ、実際には、周囲の環境への敏感な目配り、心の中からわき出てくる思いへの注目などによって意志を導き出すことが現実的になる。
そのような意志が見えたとき、再度、今回のような条件を満たしたものかを検討すれば、正しく強い意志を持った個性豊かな人間性が形成されるだろう。