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Vol.30 もしも、あなたが「マツモトキヨシホールディングスの社長」ならば

2017年5月26日発売の「BBT Real Time Online Case Study」 Vol.30は、以下の2本が収録されています。今回はCaseStudy1「あなたが「マツモトキヨシホールディングスの社長」ならばどうするか?」の一部を公開いたします。

 

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■あなたが「マツモトキヨシホールディングス」の社長ならばどうするか?
QUESTION:今回のリアルタイムケース
あなたがマツモトキヨシホールディングス(HD)の社長ならば
業界首位からの転落が予測される今、いかに新たな成長戦略を描くか?

 

【BBT-Analysis】大前研一はこう考える~もしも私がマツモトキヨシHDの社長だったら~

 

※本解説は2017/1/29 BBT放送のRTOCS®を基に編集・収録しています。

 

◆窮地に立つドラッグストアの国内最大手
# 松戸の個人商店が起源

今回取り上げるのは、国内ドラッグストアの最大手であるマツモトキヨシHDです。
1932年、創業者の松本清氏が千葉県松戸市に「松本薬舗」を開業したのが起源です。その後1954年に法人化して「マツモトキヨシ薬店」に商号を変更し、1987年には現在のような都市型ドラッグストアの第一号店となる上野アメ横店をオープン、1995年にはドラッグストアとして売上高が日本一となりました。2000年代に入ると地域企業との資本・業務提携やフランチャイズ契約などグループ拡大戦略を進めます。2007年には持株会社のマツモトキヨシHDを設立し現在に至ります。代表取締役社長の松本清雄氏は、松本清氏の孫にあたります。

 

# 2位、3位のイオングループとは僅差
抜群の知名度と業界首位の売上高を誇るマツモトキヨシHDですが、現在はその座が脅かされる状況にあります。[図-1/国内ドラッグストア売上高ランキング]を見るとわかるように、確かに現状では売上高は5,361億円と国内トップです。しかし2位のウエルシアHDと3位のツルハHDもそれぞれ5,284億円、5,275億円とほとんど差はなく、店舗数も同様です。さらに、ウエルシアHDとツルハHDはイオングループの企業で、両社を合わせると売上高も店舗数もマツモトキヨシHDを上回ります。4位のサンドラッグも売上高が5,000億円以上、店舗数は1,000店以上と迫っており、上位各社が拮抗している状態にあります。

 


◆ドラッグストア市場のグループ化
# 低迷する総合小売業に反し、小売市場を牽引

次に、国内の小売市場の変遷を業態別に見てみましょう。[図-2/業態別小売販売額推移]をご覧ください。それぞれの販売額の推移は、百貨店は1992年度のピークからほぼ半減、スーパーは維持していますが、商品の内訳を見ると、衣料品や家電、家具などの販売減少を飲料・食品販売の伸びが支えています。すなわち総合スーパー(GMS)は食品専門小売業態となることで販売額を維持している状況です。これらの総合小売業態から売り場を奪っていったのが、家電や衣料品、家具、DIY用品など特定の分野に特化したロードサイド型の専門量販店業態です。しかし、家電量販店などは通信販売の台頭でショールーム化(店舗で実物を見てネット通販で購入する購買行動)し、業界再編が進みました。また、DIY用品や日用品の低価格業態として成長していたホームセンターは、2000年代後半に横ばいとなり低迷しています。購入頻度の高い日用品や日配食品などは、大型のロードサイド店でまとめ買いするよりも、頻繁にアクセスできる生活圏に近い小型店舗のニーズが増していきました。こうした背景により、コンビニや通販、そしてドラッグストア業態が小売市場を牽引しています。

 

# 業界再編と寡占化が進む

ただし、ドラッグストア市場はこの数年、成長スピードに陰りが見られます。2000~2009年にかけては年率7.4%で成長していた市場規模は2010年度以降、年率1.4%に減速しています。また企業数は2004年度の671社をピークに、その後は下降を続けて2015年度は447社とピークの7割弱にまで減少しました[図-3/ドラッグストアの市場規模および企業数]。

 

企業数が減少している一因は、年々進行している業界再編です。ドラッグストア上位10社の市場集中度は2000年度には29%でしたが、徐々にその割合が増加し、2015年には65%にもなっています[図-4/ドラッグストア市場規模における上位10社集中度]。こうした傾向は、今後も続くと予想されます。小売業では一般に規模の経済がはたらくとされています。小売業における規模の経済は特に集中購買による仕入れ原価の低減で発揮されます。販売規模が大きいほど、メーカーとの交渉力が強まり、仕入れ原価やプライベートブランド商品の開発において有利な条件で取引ができます。そのため小売事業者は規模の拡大および業界の寡占化を進めていくことが重要な課題になります。
業態別に見ると最も寡占化が進んでいるのはコンビニで、10.1兆円の市場規模に対し、上位3社が市場の8割を占めるという状況です。同様に、イオンなどのGMSは上位6社、家電量販店とディスカウントストアは上位7社で全体の8割を占めるというように、寡占化が進んでいます。これらに比べドラッグストアでは、市場の8割を占めるのに上位21社が必要という状況ですので、今まさに激しい業界再編とグループ化が進行している最中なのです[図-5/業態別市場規模における集中度80%を満たすために必要な企業数]。


 

# 二大ボランタリーチェーンの衰退と企業グループの台頭
ドラッグストア業界の黎明期である1970年に、小規模な薬局・薬店が集まって2つのボランタリーチェーンが組織されました。ひとつは「オールジャパンドラッグ(AJD)」、もうひとつは「日本ドラッグチェーン会(NID)」です。ボランタリーチェーンとは加盟店が経営の独立性を保ちつつ共同仕入れや商品開発を行う協業グループです。1990年代にドラッグストア業界は成長期に入り、ボランタリーチェーンの加盟企業同士で競争が激化し、組織としての影響力が弱まっていきます。このボランタリーチェーンに代わって、大手企業を中心に資本関係や業務提携、フランチャイズ契約を軸とした企業グループが影響力を強め、業界再編を主導しています。次に主な企業グループを見てみましょう。

 

# ドラッグストア業界の主要企業グループ
現在、ドラッグストア業界で最大の企業グループはイオングループです。先述したように、業界2位のウエルシアHDと3位のツルハHDにそれぞれ51%、13%出資しています。その他にもメディカル一光、ウェルパーク、ザグザグ、クスリのアオキに資本参加しており、これらの資本関係を軸に共同購買グループ「ハピコム」を形成しています。2016年2月時点では31社が加盟し、総店舗数は4,744店舗、総売上規模は非公表ですが、少なくとも1兆円を超えています。イオン自体、歴史的には地域スーパーの共同仕入れグループであるJUSCO(Japan United Stores COmpany)が発展して国内最大の流通グループとなった経緯があります。GMS業態が低迷し、コンビニ業態でも大手3社の後塵を拝するイオンは、ドラッグストア業態に注力、グループを拡大し業界トップを狙っています[図-6/ドラッグストア業界の主要グループ①]。

イオン系のハピコムに次いで大きな企業グループを形成しているのがマツモトキヨシグループです。マツモトキヨシHDは2000年代以降、地方の中堅ドラッグストアを買収してグループ拡大を図ってきました。買収した企業は全国7つのエリアに区分し、地域の実情に合わせた最適なマーチャンダイジングと店舗運営の効率化を進めているのが特徴です[図-7/ドラッグストア業界の主要グループ②]。

 

そのほかにも、業界7位のココカラファインやコクミンなどが参加する共同購買グループが加盟10社、総売上規模5,153億円の「WINグループ」を形成しています(2016年3月末時点)。業界4位で首都圏に地盤を置くサンドラッグは、ディスカウントストア業態3位で九州に地盤を持つダイレックスを買収し、地方展開を強化しています。業界11位の富士薬品は富山での配置薬販売業を祖業とし、医薬品製造も手掛ける企業で、1995年にドラッグストアに参入して全国約1,200店舗を展開する富士薬品ドラッグストアグループを形成しています[図-8/ドラッグストア業界の主要グループ③]。

 

ここまで業界全体の動向について見てきましたが、次に競合大手の商品戦略や出店戦略を比較しその特徴を分析していきます。業界団体である日本チェーンドラッグストア協会は、公的な定義ではないとしつつも、ドラッグストアを「医薬品と化粧品、そして、日用家庭用品、文房具、フィルム、 食品等の日用雑貨を取り扱うお店」と定義しています。そして取り扱う商品を「医薬品」「化粧品」「日用品」「食品・その他」の4つに分類して統計を取っています。2015年度における業界全体の商品別売上高構成比は「医薬品」32.1%、「化粧品」21.2%、「日用品」21.5%、「食品・その他」25.2%となっています。
上場ドラッグストア各社の商品別売上構成を比較したものが[図-9/ドラッグストアの商品別売上高構成比]です。
これを見ると、大都市に地盤を持つ企業は化粧品と医薬品の販売割合が多く、地方都市に地盤を持つ企業は食品や日用品の販売割合が多くなっていることがわかります。そもそも医薬品自体はそれほど購入頻度の高い商品ではありません。そのためドラッグストア各社は、医薬品のほかに毎日の生活に欠かせない商品を揃えることで顧客の来店頻度を高める戦略を取っています。女性の就業率の高い都市部においては化粧品のニーズが高く、逆に専業主婦の多い地方では食品や日用品のニーズが高いということです。首都圏都市部を中心に展開してきたマツモトキヨシHDは、化粧品が全体の4割弱を占め、医薬品が約3割、日用品や食品は少なめです。地方に地盤を置くコスモス薬品やゲンキー、カワチ薬品は食品が主力で、7割以上を食品と日用品が占めており、化粧品は1割前後に留まります。

 

大手ドラッグストアの出店地域を詳しく見ると、マツモトキヨシHDは首都圏に5割弱の店舗が集中しています[図-10/大手ドラッグストアの地域別店舗展開割合]。関東・甲信越に14%、九州・沖縄に11%ありますが、他の地域の割合は10%以下です。化粧品を中心とした都市型店舗で成長してきたといえるでしょう。

 

# 業態を超えた競争が激化
ドラッグストアは、一言であらわすなら「医薬品・美容・日用品・食品に特化した生活エリアに近いディスカウントストア」といえるでしょう。スーパー、コンビニ、ディスカウントストア、ホームセンターなどと部分的に競合しつつも、医薬品・美容・日用品・食品に絞って品揃えを強化したという点でスーパーやディスカウントストアとは異なり、ディスカウントしているのでコンビニとも違い、ホームセンターに比べて生活エリアに近接している、という特徴があります。すなわち、各業態の“いいとこ取り”をした業態がドラッグストアであり、それが業界の成長要因だったといえます。
しかし、ドラッグストア市場の成長は鈍化しており、さらなる成長を模索するためにはスーパーやコンビニなど他業態が得意とする分野により深く踏み込んでいく必要があります。また、他業態から医薬品分野への進出を図る動きも進んでおり、業態を超えた競争が激しくなっています。したがって、ドラッグストアとしては調剤薬局などの機能を付加して専門分野を強化し、他業態と差別化を図ることが必要となります[図-11/ドラッグストア業態の特徴]。

 

◆他メーカーとの提携で国内外の市場強化を
# 課題は規模の経済の追求と他業態との差別化

ここでマツモトキヨシHDの現状と課題を整理しましょう。
ドラッグストアの「市場」について見ると、ドラッグストアは小売市場における成長業態でコンビニや通販とともに市場を牽引してきましたが、近年は6兆円前後で市場の成長が鈍化しています。また、コンビニやGMSなどの業態と比べると、上位企業による市場寡占度はまだ低いといえます。
「競合」に関しては、マツモトキヨシHDは業界トップの座にあるものの、上位グループが拮抗しており、特に2位のウエルシアHD、3位のツルハHDとはほとんど差がありません。上位企業による共同購買グループへの集約も進んでいます。一方で、スーパー、コンビニ、ディスカウントストア、ホームセンターとは業態を超えた競争が激しくなってきています。
「自社」については、首都圏展開に強みがあり、都市型店舗が中心です。働く女性をターゲットとし、化粧品や医薬品の品揃えを充実させているという特徴があります。
このような現状においては、「M&Aによる規模の経済追求」と「専門性の追求による他業態との差別化」が課題となります[図-12/マツモトキヨシHDの現状と課題]。

 

・・・・・・・・・・・<続きは書籍版で>

各ケースの”今”について、どのような課題を見い出し、あなたは何を導き出しますか?
ぜひこの書籍を通じて、”実践的な思考プロセス”を育ててください。

 

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